№231 コーチとしてクライアントに質問を投げかけることは通常ですが、自分自身に対する自問自答のコーチングとなると、なかなか自分にあった良い質問が思いつきません。
そこで、過去の経験の中で自分の心を動かした質問をいくつか「座右の質問」としておくと便利だということに気づきました。
私自身の「座右の質問」をここに書きとめて、ご紹介したいと思います。
『その壁の正体はなんですか?』
目標達成に向けて努力していても、うまく行かない、停滞してしまうことはよくあることです。
何か壁があって先に進まない。
他人のせいにしてみたり、腹を立てたり、自信を失って迂回しようとしたり。行き詰ってうまく行かない真の原因を客観的に考えられないことがあります。
焦っていると目の前のことでいっぱいになり、冷静ではいられません。
そんな時に、この質問が機能します。
『その壁の正体はなんですか?』
本質を問う質問ですが、「本質は何か」と問われるより「正体は何か」の方が「悪さ」をしているものを冷静に見極めてやろうという気持ちになれる、私にはピッタリの質問です。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という句があります。
うまく行かない時、「実はこんなことだった」と軽く笑い飛ばすことでブレークスルーできる。そんな気持ちになれるのが「正体」という単語です。
実際のクライアントには、『その壁はどのように見えていますか?』という質問を投げかけることがあります。
コーチ「何でできた壁?」
クライアント「レンガでできた壁」や「鉄の扉」など
コーチ「何故、〔レンガ〕と表現したのですか?」
クライアント「古臭いけど硬くて頑丈、一部崩れているところもあるから」
コーチ「古臭いというのは、具体的に」
クライアント「大先輩が昔ながらの考えに固執していて考えを変えない」
コーチ「なるほど、大先輩が前提としている価値観は何だと思いますか」
...というよう進めます。
じっくりいイメージからじわじわと具体化していくには良いですが、自問自答の質問としては少々面倒でイライラしてしまう時があります。自問自答には向きだと個人的には思っています。
『壁に対する、とりあえずの一歩は何ですか?』
質問によって壁の正体が分かれば、事態は変わります。
解決に向けて動き出すことが可能になります。
そこで次の質問になります。
『壁に対する、とりあえずの一歩は何ですか?』
「壁を乗り越えるために」とせずに「壁に対する」と軽い質問にしています。
「乗り越える」となると相当のプレッシャーです。
私の場合は、先まで見通して納得しないとなかなか行動に移せない性格というものがあり、何をするにも初動が遅れるという特徴があります。
そのため、“とにかく動いてみる”を心掛け、とりあえずの一歩を踏み出すようにしています。
「乗り越える」とせずに、「壁に対する」としているのは、一歩に対するハードルを下げようとする意図があります。
「乗り越えるためにやれること、やるべきことは?」とせずに、「とりあえずの一歩は?」としているのもそのためです。
まずは自分に行動を起こさせる工夫なのです。
一歩を踏み出せば、解決に向けた流れが生まれます。
さらに前進するための質問として、
『解決した時に振り返ると、何を努力した結果が報われたと考えますか?』
『乗り越えるための鍵は何だったと思いますか?』
を投げかけることがあります。
未来から現在を振り返る質問でちょっと目線を変えて、目的思考で気持ちをリフレッシュさせながら進めるように工夫しています。
他者に支援を仰いだり、協力を依頼する発想も忘れないように、
『誰からの支援が一番ありがたかったですか?』
『誰と一緒に達成したいですか?』
という質問も大切にしたいと考えています。
通常の価値観をリセットするスウィッチ
コーチをやっていると、同じ質問であるにもかかわらずクライアントのパーソナリティや状態によって有効に機能したり、しなかったりします。また、対話の流れやタイミングやによっても質問に対する反応は様々です。
「座右の質問」は過去の質問から自分に気づきを与えてくれたものをピックアップすることから、比較的自分に響く質問になっているのではないかと考えています。
過去と今とで置かれている状況や向き合っている課題は違いますが、しっかりと機能してくれています。
「座右の質問」は自分の日常の考え方、デフォルトの価値観・傾向をリセットしたり、別視点に切り替えるための自分のスイッチ(Suitable Switch for me)になっているのかもしれません。
これからも「座右の質問」を増やし、アップデートしていきたいと考えています。