「まだ頑張り続けますか?」──そんな問いにドキッとした方へ
50代に差し掛かると、「このままでいいのか?」「これからどう生きたいのか?」といった問いが、ふと浮かぶことがあります。
責任ある立場を任され、頑張ることが当たり前だった日々。けれど、いつの間にか「やるべきこと」に押し流され、「やりたいこと」を置き去りにしてはいないでしょうか。
以前、企業管理職のCさんは、部下育成・会議・資料作成に追われる毎日でした。ある日、「自分は誰かの期待ばかりに応えてきた」と気づき、ふと涙がこぼれたそうです。
今回ご紹介するのは、「やりたい」と「やらねば」の2軸でキャリアを見直すシンプルな方法です。
“ライフキャリア”を見つめ直すきっかけとして、ぜひ活用してみてください。
キャリアを整理する、2つの軸と思考法
仕事や日常の活動を、次の2つの観点で見つめ直してみましょう。
- 欲求の軸:「やりたい/やりたくない」
- 義務の軸:「やらねばならない/やらなくていい」
これをマトリックスにすると、自分の行動が4つの象限に分類できます。
たとえば、部長職のAさんは週3回の定例報告会を「義務感だけでこなしていた」と気づき、第3象限に分類。
資料作成を若手に任せるようにし、自身は「若手育成プログラム設計」という第2象限の活動に時間を割くようにしました。
結果的に若手の自律性が高まり、職場の雰囲気も変わったそうです。
なぜ今、「第2象限」にフォーカスすべきなのか?
30代・40代は、「やらねばならない」と「やりたい」が一致する第1象限でキャリアを築くのが自然な流れ。
でも50代以降は、それだけでは心も身体ももたない時期に差し掛かります。
役職定年や親の介護、体力の変化など、見えない制約が増えるなか、無理のないペースで「やりたいこと」に時間を割くことが重要になります。
心理学では、内発的動機に基づく行動の方が満足度や持続性が高いとされています(自己決定理論)。
「誰かにやらされている」のではなく、「自分が選んでいる」と感じることが、人生の充実につながります。
また、キャリア理論の一つであるクランボルツの計画された偶発性理論では、「偶然の出会いや経験が人生の転機になる」と説かれています。
趣味で始めたこと、たまたま引き受けた活動が、思わぬ方向へ広がることもあります。
実際に、営業職を退職したBさんは、地域の菜園ボランティアに参加。もともと土いじりが好きだったBさんは、今では子どもたちへの「食育指導」まで任されるように。彼女いわく、「好きなことで誰かとつながるのが何より楽しい」とのことでした。
人生の選択肢を、整えていこう
50代からのキャリアは、「上に昇る」から「整える」への転換です。
忙しさに追われる日々のなかで、ちょっと立ち止まり、次の問いを自分に投げかけてみてください。
- 「これは本当に自分がやるべきこと?」
- 「これをやった先に、自分はどんな気持ちになるのだろうか?」
- 「やりたいことを、後回しにしていないか?」
仕事も、人生も、100%やめることは難しい。だからこそ、“ほどほど”にやること、“やめる”こと、“楽しむ”ことを整理して、自分にとって心地よいペースを作ることが大切です。
「やらなきゃ」に振り回されるのではなく、「やりたい」を軸に選びなおす。
その一歩が、あなたのこれからのキャリアを、もっと自由で創造的なものにしてくれるはずです。
あなたは今、どの象限に一番時間を使っていますか?