「聲なきに聞き、形無きに見る」初代警視総監(大警視)の言葉

№215ワンセンテンスブログです。

明治維新の功労者、日本の近代警察制度を創設・確立した初代警視総監(大警視)である川路利良(1843 – 1879)の言葉です。

今日のワンセンテンス

「聲なきに聞き、形無きに見る」
「探索ノ道微妙ノ地位ニ至リテハ聲無キニ聞キ形無キニ見ルガ如キ無聲無形ノ際ニ感覚セザルヲ得ザル也」
出典『警察手眼(けいさつしゅがん)六八』

警察官心得としての意味

『警察手眼』は川路利良の警察官に対する訓話、語録をまとめたもので、警察官の心得として今も読み継がれているものです。

この言葉は、『警察手眼』の中の「探索心得」の中にあります。

「警察官たるものは、声なき声に耳を傾け、表面的、外形的な現象のみにとらわれることなく、奥に隠されたモノを見逃すことなく、真実をあばき出すことが必要である」

川路利良大警視(1843-1979)

刑事が捜査する際に、真実を洞察する態度を説いたものとして知られています。

親に対する子の心得

この言葉は、中国古典の『礼記』がそもそもの出展のようです。

意味としては、「子は、親が何を言おうとしているかを察し、親が何をしようとしているかを察して孝養を尽くさなければいけない。」とのことで、「注意や配慮が行き届いている様」を指しているようです。

「礼記」は古代中国の書物。儒学者が集めた「礼」に関する書物が編纂されたものです。

忠孝を説く儒学にあって、道徳的規範のことを「礼」と言います。

子が親に対しては、言外、動作に表れない気持ちを察するまでにを親を敬い、孝行することの大切さを説いた言葉になります。

ファシリテーターの心得

この言葉は、ファシリテーターにとっても意味深い言葉のように感じます。

ミーティング等でアイデアを発散させ、収束させる。意思決定のため論点を合わせて議論を尽くし、合意形成を図る。そのようなファシリテーションの場でも、「声なきを聴き、形無きに見る」ことが求められます。

特に意見の対立があった時、メンバーの主張の奥にあるものを探り、合意に向けて「見える化」していきます。

意見には、表面上の発言の奥に「なぜそのような主張をするのか」の理由があり、目的、視点、立場、前提、本当の欲求などが隠れています。

各人がそれぞれ個性として持っている信念、価値観、倫理、哲学があり、意見の対立のもとになっていることも少なくありません。

ファシリテーターはメンバーの発言の奥にあるものを引き出し、メンバー間で理解し合うことに努めます。

まさに、「声無きに聞き、形無きにみる」を心得としたいところです。

最後に、円滑な人間関係構築のための心得

川路利良の言葉を、警察官の心得として、親に対する子の心得として、ファシリテーターの心得として応用して紹介してきました。いろいろな場面で使える心得だと思います。

「すべての悩みは人間関係の悩みである」心理学者アルフレッド・アドラーの言葉です。

氷山モデルというものがあります。浮かぶ氷山のうち、水面上に見えているのはほんの一部で、大半は水面下に隠れているというものです。

ある人を理解するのに、その言葉、行動、態度といった氷山の上の見える部分だけでは不十分です。下に隠れている意図、感情、価値観まで理解しないとその人を理解したとは言えません。

表面だけの理解では、その人とのやりとりの場面で行き違いや誤解が生まれうまく関係を築くことはできないでしょう。

人間関係を複雑にしているのは氷山の下の部分です。

氷山の下の部分を意識することで少しは人間関係の悩みが減ることにならないでしょうか。

川路利良の言葉は、そこに意識を向けるための言葉として記憶しておきたいものです。

この記事を書いた人

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西口満

「気づきによる学び、自ら成長する」を支援し、ひとりひとりのウェルビーイングの実現と生産性の高い職場のチームづくりを行い、企業や社会の発展に貢献する

ビジネスリーダー育成コーチ、
人事戦略のコンサルティングをしています。

プロフェッショナルとして「人の成長」に関わり続けることをライフワークとし、少しでも誰かの成長のお役に立てれば幸いです。

ブログでは、そんな私が学んだこと、気づいたこと、感じたことを発信し、誰かの、何か、前進のヒントになればと思っています。

これからも情報を発信し続けます。

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