思考停止する固定観念の存在に気づく

Blog. №0278 経営者の口から「厳しい経営環境」「難しい状況」という言葉が出てきます。

インタビュー記事、イベントでの挨拶、職場での訓示などの場面を思い起こしてください。口を開いた時の決まり文句になっているようにも思われます。皆さんの会社、組織ではいかがでしょうか。

「厳しい経営環境の中、私たちはやり遂げなければならない」
「難しい状況ではありますが、何とか工夫して乗り越えていきましょう」

困難に立ち向かうよう鼓舞するように言葉は続くのですが、聞いている側は、常套句の程度にしか響いていません。

「厳しい環境」という言葉は、話している本人にとっては様々な問題点を一括して表現できる便利な納まりのよい言葉です。また、聞いている側にとっても自分なりに解釈ができる、妙に納まりのよい言葉になっています。この便利で納まりのよい言葉は、時折私たちを思考停止に陥れる危険な言葉となります。

思考停止、行動を阻む固定観念

この納まりのよい言葉に隠れているものは固定観念です。

そもそも固定観念は思考のショートカットです。事象から結果までをパターン認識によって思考を省略する便利な機能です。過去の経験から得られた学習の成果でもあります。

しかし、思考の省略は、時によって本質を考えない習慣となります。また、考えることなく無駄や無理といったネガティブな帰結を想像させてしまうことから、次の行動やチャレンジを阻む要因になることがあります。

職場には注意が必要な様々な固定観念があります。会議の発言の中で、挨拶や雑談の中で、会話の中で、独り言として、あるいは無意識の中で、次のような言葉が発せられていることはないでしょうか。

1.環境の固定観念

ただなんとなく「この難しい経営環境だから」「厳しい経済状況なので無理」と決めつけている固定観念です。

何が厳しくて、何が難しいのか、問題点を特定しないまま自動的に諦めてしまうということはありませんか。チャレンジを閉じ込めてしまう、一歩を踏み出させない、聞いている人も何となく納得してしまいます。

「環境が悪いから」を合言葉にしている、そんな組織になっているとすれば、「茹でガエル」組織になっているかもしれません。ちなみに、「茹でガエル組織」とは、変化に対応しないままダメになっていく組織を例えて言う言葉です。熱い湯の中に蛙を放り込むとすぐ飛び出して逃げてしまいますが、水を入れた器に蛙を遊ばせた状態から火をかけて徐々に温めていると蛙は逃げることなく茹で上がってしまいます。

「厳しい環境」とかたづけてしまう前に、置かれた状況をいくつかの要因として問題点を整理・特定し、課題として明確な言葉で語ることが大切です。

2.歴史の固定観念

「わが社の伝統・歴史だから」に潜む固定観念です。

会社にとって創業の精神やミッション、強みは大事です。過去の成長の原動力になっていたのも事実でしょう。しかし、諸刃の剣で自由な発想を殺す固定観念になってしまってはいないかチェックしてみる必要があります。

VUCAと言われる時代、過去の成功体験は通用しなくなりました。未来は今の成長の延長線上にないと言われるようになっています。パナソニックは松下電器産業の当時の家電メーカーではありません。富士フィルムはヘルスケア事業がメインの会社です。

また、過去の失敗体験をタブー視するあまり変革のチャンスを逸してしまうこともあります。過去の失敗は時宜を得なかっただけでナイスチャレンジだったと考えた方がよいということもあります。

私たちは未来を考える時、過去の成功・失敗を固定観念化していないかチェックすることで変革の糸口を見つけることができるかもしれません。

3.資源の固定観念

新しいことを始めようとする時、こんな声を聞いたことはありませんか。

「人がいない、そんなの誰がやるの、今の仕事をこなすことで手一杯」
「資金がない、予算がないのに無理、経費節減方針じゃなかったのか」
「そんなノウハウをわが社は持っていないので無理、もっと強みを活かすべきだ」

人、金、物(情報)の固定観念です。

人が足りない、金がない、ノウハウがないという言葉でネガティブになり、一歩が踏み出せなかったことはありませんか。

新しいことを始める時、手を上げれば賛同者、協力者が名乗り出てくるかもしれませんし、社長に提案すればプロジェクトとして人を集めることになったかもしれません。段階的に始めることで折り合いがついたり、初期投資が意外と安くついたり、やりようによっては予算が確保できるかもしれません。ノウハウも社外ノウハウの取り込みを模索することで提携先が見つかったり、思わぬ進展があるかもしれません。

「資源がない」という言葉で安易に行動にブレーキをかけていたなんてことはないでしょうか。

4.時間の固定観念

「忙しい、時間がない」が合言葉になっていませんか。

重要案件であっても、素晴らしいアイデアであっても、いつまでたっても実行されない。時間は自ら作り出すものとは言いますが、ここも工夫をせずに半ば自動的に後回しにしていないかどうか、チェックのしどころです。

忙しい=仕事をしているというのは日本の労働文化です。労働行政は労働時間管理を主としていることから、残業の多い人が”できる人”という考えが根強く残っています。「忙しそうでんなぁ」「お陰さんで」というのは大阪商人の挨拶の定番です。

「忙しい」と言えば考えることなく自他ともに納得してしまうのです。

固定観念化していないか、今一度振り返ってみる必要がありそうです。

5.他責、あの人の固定観念

「上司が悪いから」「トップが変わらないと…」「あいつがいるから無理」というような言葉が口癖になっていませんか。居酒屋での愚痴で、頭の中に思い浮かぶサラリーマンあるあるのフレーズです。

うまくいかない理由を他人のせいにして、やれないこと、やらないことを正当化する固定観念です。

「これは営業部の問題だから」「それは親会社の問題なので何ともできない」というように、他部門、他社の問題として自分とは関わりないと片づけてしまうケースも同様です。

他責にすることでその課題は自分ごとではなくなり、思考停止が起こります。

「あの人のせい」と思った時、そこに「思い込み」がないか、ちょっと考え直してみてはいかがでしょうか。

自分にできることがまだ残っていたり、別のアイデアが思いつくかもしれません。その人に話をしてみると意外に協力者になってくれるたりすることもあり得ます。

6.「自分なんて」の固定観念

謙譲の呪縛です。

「私なんて、そんな大それたことできません」
「一介(いっかい)のサラリーマンに過ぎません」
「ひら社員ごときが…(何を言っても影響がない)」

日本人は謙譲を美徳とする価値観を持っています。
人間関係を円滑にする言葉ではありますが、発言を思いとどめさせたり、行動を縛っていることもあります。

このことは社員クラスに当てはまるだけではありません。
経営者やマネジメント層にも「自分」に対する固定観念を持つことがあります。

会議でZOOMを使うことが増えました。「ZOOMなんて無理、自分の年齢では難しい」と決めつけているマネージャーはいませんか。いまだに部下にセッティングを任せて自分でやろうとしない。
「新製品のアイデア出しは若手に任せるべきだ、自分の年齢になると難しい」と言って取り組もうとしないケースがあります。「新しいアイデアは若手に」という考えは、若手は頭が柔らかいという他者に対する「思い込み」からくるものですが、自分の能力に対する固定観念が学習を阻害しているケースです。

思い当たるふしはありませんか。

ビッグワードに注意

ビッグワードというものがあります。

抽象的であり、いろいろな解釈を生んでしまうような言葉と定義されます。

個々を抽象した言葉なので、いろいろなことをまとめて表現できますが、
いったんまとめられてしまうと具体的に何を指しているのか、説明なしには理解できない言葉になってしまいます。しかも、理解していないことに気づきません。知らず知らずに思考停止です。

例えば、「コミュニケーション」「情報の共有化」です。
会議の席で社長から「営業部と製造部との連携のためコミュニケーションを密にし、情報の共有化を図るように」という指示がありました。出席者は当然のこととして納得して散会しました。
営業部長は顧客からのクレーム情報への対応をイメージしていました。製造部長は受注と生産工程の連携を想定していました。指示をした社長はリードタイムの短縮と在庫の圧縮を考えていました。会議出席者の多くは何となく納得しているだけでした。

ビッグワードの中には聞く人それぞれの固定観念が入っていて、それぞれに「分かったつもり」を生んでいる可能性があります。

固定観念を手掛かりに職場を変える

「厳しい経営環境」「情報の共有化」も何となく重要な意味がありそうですが、よく考えると分からない。思考停止を起こさせる固定観念について述べてきました。

まず、固定観念の存在に気づくことです。
そして、これらの言葉に出会った時に、それが具体的に何を意味しているのか、ちょっと立ち止まって考えてみることをお勧めします。

職場チームで普段使っている、固定観念について話し合うことで職場の活性化にも繋がります。

「活性化」もビッグワードですね。
会議での発言する人・発言量が増える、チーム目標を全員が同じように理解し説明できる、目標達成に直接つながる行動が増える、指示されたタスクへの着手が早くなる、手戻りが減る…
職場の「活性化」の意味を、より具体的表現に砕いていくミーティングを職場全員でするだけでチームビルディングができそうです。

特に、組織のミッションやビジョン、方針の表現の中に潜む固定観念について話す機会を設ける。
マネージャーの立場にいる方には是非お試しいただきたいところです。

【今回のまとめ】

  • 固定観念は思考停止を生み、行動を起こさせない
  • 職場で語られる固定観念が含まれる言葉、ビッグワードに注意
  • 固定観念を具体化することで職場が変わる

この記事を書いた人

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西口満

「気づきによる学び、自ら成長する」を支援し、ひとりひとりのウェルビーイングの実現と生産性の高い職場のチームづくりを行い、企業や社会の発展に貢献する

ビジネスリーダー育成コーチ、
人事戦略のコンサルティングをしています。

プロフェッショナルとして「人の成長」に関わり続けることをライフワークとし、少しでも誰かの成長のお役に立てれば幸いです。

ブログでは、そんな私が学んだこと、気づいたこと、感じたことを発信し、誰かの、何か、前進のヒントになればと思っています。

これからも情報を発信し続けます。

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