オンラインファシリテーターの心得 『オンライン会議の教科書』堀公俊(朝日新聞出版)より


№269 ZOOMなどオンライン会議システムを使ってのミーティングが多くなりました。と同時にオンラインでのファシリテーションの場が確実に増えています。

リアル会議と勝手が違い、独特の雰囲気もあって、会議終了後には果たして上手くいったのか、今一つ何かモヤモヤ感が残ってしまうことが多いです。

そんな方々には、是非お読みいただきたい本があります。『オンライン会議の教科書』堀公俊(朝日新聞出版)です。

いわゆるツールの使いこなし解説本ではなく、オンラインの環境下でどのように会議を運営していけばよいかについてファシリテーターの視点で書かれています。

オンライン会議の作法を学ぶための良書です。

以下、ファシリテーターとしての会議運営のポイントをまとめてみました。

詳しくは、『オンライン会議の教科書』をお読みいただければと思います。

オンライン会議の困った点

オンライン会議で困る点は何かというと、場の空気感が読めないということがあげられます。

リアルの会議では、表情、息づかい、同じ空間を共有しているという感覚から、明確に言わなくても察せられる空気感というものがあります。

私たちは言語情報だけでなく、非言語情報を受け取って、感覚的に察知するものがあります。

オンラインではどうも空気感が読めない。議論が尽くされたのか、機が熟したとかが分からない。非言語情報のやりとりがどうも不足するようです。

オンライン会議では意見を言うタイミングが計れないという話を聞きます。

リアルの会議では、阿吽の呼吸でのコミュニケーションもできるのでしょうが、オンラインではうまくいきません。

ファシリテーターが「意見をどうぞ」と言っても長い沈黙が続くケースもあれば、口火を切った話が出合い頭に重なってしまうこともあります。

他の人の話に割って入るタイミングがなかなかつかめないということもよく起こります。

発言のタイミング「間」がつかめないということです。話す人が限られたり、相互牽制の沈黙がうまれたりします。

つながっているけれども画面枠のこちら側と向こう側で線引きされている、そんな感覚が空気を読めなくしているのかもしれません。

空気感がつかめないという感覚から、オンラインでは本音でのコミュニケーションが難しいと感じておられる人も多いかと思います。(思い込みかもしれません)

察するコミュニケーションが難しいとなれば、言葉ではっきり伝えるしかありません。

私たち日本人は、本音をズバズバと言葉にする文化ではありません。本音は語らずに察するコミュニケーションに慣れている私たちは得意技を封じられ戸惑うばかりです

ITスキルに不案内と言うこともオンライン会議の困る点にあげられるでしょう。

オンライン会議でのファシリテーションポイント

1.テンションは3割増しで

会議をとにかく活性化するならファシリテーターのテンションをあげてオーバーアクション、声のトーンをあげて元気に振る舞いましょう。

会議をリラックスしながらじっくり考えを巡らせるならば、落ち着いたトーンでゆったりと始めましょう。

要はオーケストラの指揮者よろしく場づくりを行うということです。

オンラインの場合、多数で集合しているようで、実はひとりひとりが場を共有している感覚が少なく、リアル以上に独立あるいは孤立感が高い状態にあります。

参加者にオンライン画面からはみ出して勢いをつけるためにはファシリテーターのオーバーアクションが必要です。そして参加者ひとりひとりを丁寧に扱うといった大胆かつ繊細さが要求されます。

2.リアル以上にプッシュをかけていく

アプローチ法にはプッシュ型(指名、依頼、クローズドクェスチョンするなど積極的にかかわる)、プル型(待つ、沈黙を尊重する、オープンクェスチョンなど消極的なかかわり)があります。

オンラインでは、空気感が読みにくく、リアルにはない「間」ができてしまいます。

ファシリテーターとしてはリアル以上に積極的に介入する方がうまくいきます。

場の自主に任せることも大切ですが、参加者が考えている沈黙の間(介入しない間)とオンライン固有の間(介入した方が良い気まずい間)を読まければなりません。

また、オンラインでは、空気が読めずひとりよがりの話になりやすいので、介入して言い換えたり要約のテクニックなどで明確にすることも大切です。

また、ギャラリービューでは、誰に対する発言か分からないので、誰に言っているのか尋ねるようにしましょう。

3.感じたことを言葉にする

メンバーの非言語コミュニケーション、サインに気づいて、ファシリテーターが積極的に確認します。

空気感の読み間違いを恐れずに積極的に言語化し、確認し、全員で共有するのです。

空気感を正確に察知できればいいですが、分からなければ思い切って聞いてみましょう。これも立派なコミュニケーションです。

ズバリ聞くことはリアルではなかなか難しいです。相手との対立を生むことになりかねません。

しかし、オンラインでは対立は起こりにくいようです。

オンラインの画面上では目と目が合わない、コンピュータの画面を通しているので正面で対決している感がなく、相手に対する脅威を感じにくいといった特徴があります。

なので、オンラインではズバリ物を言っても大丈夫なのです。

相手を恐れず積極的にかかわることで参加者との信頼関係が高まるかもしれません。

ファシリテーターとして当たり前のことをやる

オンライン会議ならではの留意点はあります。
しかし、『オンラインの教科書』では、やはりファシリテーターとして当たり前のことをきちんとやることを説いています。

すなわち、

  1. 会議のアジェンダを明確にする。
    ゴール、進め方、決定の方法を皆で共有し、明確にして議論を進捗させる。
  2. 論点整理をきちんと見える化する。
    そのためによりファシリテーショングラフィックが有効なのですが、ここにはまだIT上の問題があります。
  3. 決定プロセスを見える化するなどして、全員の納得感を大切にする。
  4. 会議後のアクションプランの明確化、議事ログアップでメンバーのコミットを促す。

などなどです。

結局は、ファシリテーターとしての基本を忠実に守り、参加メンバーに対してより丁寧なファシリテーションを行うということです。

『オンラインの教科書』堀公俊(朝日新聞出版)「オンラインの教科書」には、その他オンライン会議にまつわる様々なことが開設されています。

オンライン会議の前準備、会議中のお作法、オンラインでのチーム作りなどです。

オンライン会議だけでなく、リアルの会議にも役立つ一冊のように感じました。お勧めします。

この記事を書いた人

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西口満

「気づきによる学び、自ら成長する」を支援し、ひとりひとりのウェルビーイングの実現と生産性の高い職場のチームづくりを行い、企業や社会の発展に貢献する

ビジネスリーダー育成コーチ、
人事戦略のコンサルティングをしています。

プロフェッショナルとして「人の成長」に関わり続けることをライフワークとし、少しでも誰かの成長のお役に立てれば幸いです。

ブログでは、そんな私が学んだこと、気づいたこと、感じたことを発信し、誰かの、何か、前進のヒントになればと思っています。

これからも情報を発信し続けます。

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