マネジメントを成長させる3つの視点 ― 生産性・人間性・社会性を統合するスパイラル型マネジメント

マネジメントの「あるある」から始まるジレンマ

「この案件、来月までに必ず仕上げてください」

会議でそう伝えた数週間後、チームの空気が変わってきました。
会話が減り、笑顔も少なくなります。

報告は来るものの、どこか余裕がありません。
そしてある日、メンバーの一人がこう言いました。

「最近、ちょっとしんどいです…」

成果を重視したマネジメントが、チームの疲弊を生んでいたのです。

では、人を大切にすればどうでしょうか。

「まずは無理をさせないようにしよう」
「部下の意見を大切にしよう」

そう考え、対話の時間を増やし、無理な目標を見直しました。

すると、チームの雰囲気は良くなります。
会議での発言も増え、関係も改善しました。

しかし、数か月後。

「最近、成果が少し弱いね」

上司からそう言われます。

今度は、成果が課題として浮かび上がってきたのです。

さらに別の場面では、こうしたこともあります。

コンプライアンスを重視し、
慎重に判断するようになります。

リスクを避け、
前例を確認し、
慎重に進める。

その結果、失敗は減ります。

しかし同時に、
新しい挑戦も減っていきます。

「前例がないのでやめておきましょう」
「リスクがあるので見送りましょう」

気づけば、チームの動きが小さくなっていました。

成果を重視すれば、人が疲弊する。
人を重視すれば、成果が弱くなる。
社会的責任を重視すれば、挑戦が減る。

マネジメントとは、こうした相反する価値の間で判断を続ける営みなのです。

マネジメントの3つの視点

こうしたジレンマを整理する視点として、
「生産性」「人間性」「社会性」という3つの視点があります。

生産性 → 成果・効率・利益

人間性 → 個人の尊重・成長・関係性

社会性 → 社会的責任・倫理・公共性

この3つは、どれも重要です。
しかし同時に、相反しやすい価値でもあります。

だからこそ、マネジメントは難しく、そして奥深いのです。

なぜこの3つが重要なのか

企業や組織は、単に成果だけを追い求めればよいわけではありません。
人が疲弊すれば、持続的な成果は生まれません。

また、人だけを大切にしても、組織としての成果が伴わなければ、
組織は存続できません。

さらに、社会的責任を無視すれば、
組織は信頼を失います。

成果 人 社会

この3つを同時に考えることが、
現代のマネジメントに求められている基本的な視点です。

マネジメントの偏り

しかし、マネージャーにはそれぞれ傾向があります。

成果を重視するタイプ
人を重視するタイプ
社会性を重視するタイプ

どれも強みですが、
偏りが強くなると問題が生じます。

マネジメントの問題は、能力ではなく、視点の偏りから生まれることが多いのです。

あなたはどのタイプでしょうか

ここで振り返ってみてください。
あなたはどの視点を重視しているでしょうか。

成果でしょうか。
人でしょうか。
社会的責任でしょうか。

この偏りに気づくことが、マネジメントの成長の第一歩になります。

あるマネージャーとの対話

あるマネージャーの方が、こう相談されました。
「チームの成果が上がらないんです」

話を聞くと、その方は非常に責任感が強く、成果を重視するマネージャーでした。
私は、まずこう問いかけました。
「チームのメンバーは、今どんな状態でしょうか」

少し沈黙がありました。

「正直…疲れているかもしれません」

そこでさらに問いかけました。
「成果を上げるために、今必要なのは何でしょうか」

この対話をきっかけに、そのマネージャーは部下との対話を増やしました。

するとチームの関係は改善しました。
しかし今度は、成果が落ち始めました。

再び対話を行いました。
私はこう問いかけました。
「このチームが、長く成果を出し続けるには何が必要でしょうか」

この問いをきっかけに、そのマネージャーは役割分担を見直し、
育成と成果を両立する仕組みを考え始めました。

さらに私は問いかけました。
「この判断は、組織としても、社会的にも意味がありますか」

この問いによって、視野はさらに広がりました。

成果だけでなく、
チームの成長、
そして社会的な意味まで、
判断の視点が広がっていったのです。

このように、マネージャーは経験と省察を繰り返しながら、
視座を高めていきます。

マネジメントはスパイラルで成長する

このマネージャーは、
実践と省察を繰り返しながら、
生産性、人間性、社会性の視点を行き来し、
少しずつマネジメントを深めていきました。

一度気づいたから終わりではありません。
状況が変われば、再び迷い、再び考えます。

こうしてマネジメントは、
スパイラルのように成長していくのです。

このプロセスを通じて、
マネージャーの視座は変化していきます。

個人の成果からチームの成長へ
短期の成果から長期の成長へ
部分最適から全体最適へ

こうして、マネジメントの視座はスパイラルのように高まっていきます。

この成長は、マネージャー自身だけではありません。

マネージャーの成長はメンバーの成長につながり
メンバーの成長は組織の成長につながります。

そして、その経験は人としての成長にもつながっていきます。

マネジメントに正解はありません。
しかし、視点を増やすことで、判断の幅は広がります。

成果だけを重視するのでもなく、
人だけを重視するのでもなく、
社会的責任だけを重視するのでもない。

その時々の状況に応じて、
3つの視点を行き来しながら判断していくこと。
それが、マネージャーとしての成長につながっていきます。

そのために、次のような問いを持つことが役に立ちます。

この判断は、成果につながるか。
この判断は、人の成長につながるか。
この判断は、社会的に意味があるか。

この3つの問いを持つことが、
マネジメントの成長を促します。

最後に、あなたに問いかけたいと思います。

あなたのマネジメントは、今どこに偏っているでしょうか。
そして、次に広げるべき視点は何でしょうか。

この記事を書いた人

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西口満

人はいかに成長するのか。
この問いを出発点に、キャリアコンサルティング、コーチング、人材育成の実践に取り組んでいます。

このブログでは、キャリアを中心とした人の成長に関わる探究と、成長を支える支援のあり方について発信しています。
これからも情報を発信し続けます。

キャリア開発・人材育成コンサルタント
オフィス気づきと学び 代表

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