ラッセルの幸福論、幸福になるために人を好きになる

№253 イギリスの哲学者バートランド・ラッセルの幸福論からの引用です。

幸福になるために人が持っている資源の中で、最大のものは”人を好きになる心”だということに気づきました。

今日のワンセンテンス

義務感は仕事においては有用であるが、人間関係では義務はおぞましいものである。人びとの望みは、人に好かれることであって、忍耐とあきらめをもって我慢してもらうことではない。たくさんの人びとを自発的に、努力しないで好きになれることは、あるいは個人の幸福のあらゆる源のうちで最大のものであるかもしれない。

出典『ラッセル 幸福論』(安藤貞雄訳、岩波文庫)

バートランド・ラッセル(1872 -1970)はイギリスの哲学者、数学者です。核兵器廃絶など平和運動に尽力するほか、その著作群は1950年にノベール文学賞を受賞しています。

人間関係における義務感はおぞましい

ラッセルの言う義務感とは、好きでもない人に好かれようと努力することを指しています。

好きでもない上司に媚びへつらわないといけない時、自分の感情を押し殺して生活のため出世のために気に入られなければなりません。

社会や組織の中で我慢をし、時には仕方がないとあきらめながら、人間関係を取り繕う、そんな姿を「おぞましい」と評しているのです。

嫌いな人に好かれようとしなければならないというのは矛盾です。

好きでない人に対して好きなふりをしければならないというのは相当の苦痛を伴います。

仮面をかぶり、自分を失くす、人として何て不幸なことなのでしょう。

人は人に好かれたいと思うもの

人に嫌われたいと思っている人はいません。

多くの人は人に嫌われることを恐れています。嫌いな人に囲まれた状態ほど居心地の悪いものはありません。

嫌われているだけならまだしも、自分に対して悪意を持っている人に囲まれた状態は、針の筵(むしろ)の状態で、身に迫る危険すら感じる恐怖の場です。

自分は人に嫌われてもいいと割り切っている人も多くいます。

仕方がないと諦めて意に介さない。ある意味、逆境に負けない強い人と言えます。ストレス耐性の強い人と言えるでしょう。

割り切ることで萎縮せず、自分のやりたいことを貫くことができます。

そうすることで、応援してくれる味方を得ることもありますが、敵を多く作ってしまうことにもつながります。

割り切るということは、それらを含めて納得するということなのでしょう。

それでも嫌われるよりは好かれる方がいいに決まっています。

誰もが人には好かれたいのです。

人好きになるとこと

やはり割り切るのが良いのでしょうか。

返報性の原理というのがあります。

人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱く心理の事です。

変じて、人は他人から好意を寄せられると、自分もその人に好意を寄せるようになるということがあります。
好意の返報性とも言います。

簡単です。人に好かれたければ、相手を好きになればいい。

しかし、そこにも相手を好きになる努力が必要で、欠点に目をつぶったり、長所しか見ないようにしたり、ポジティブでいるための相当の努力を支払う必要があります。

最大の幸福の源とは

ラッセルは幸福の源は人を好きになることであると言っています。

幸福になるために人が持っている資源の中で、最大のものは”人を好きになる心”だということです。

個人の幸福の源は、財、地位や名誉、達成感、いろいろあります。

その中で、ラッセルは幸福の最大の源は、人を好きになること、しかも自発的に努力なしに人が好きになれたらどんなにいいか、ということを言っているのではないでしょうか。

“たくさんの人びとを自発的に、努力しないで好きになれることは、あるいは個人の幸福のあらゆる源のうちで最大のものであるかもしれない。”

そもそも嫌いな人に対して好意を寄せるなんてことは至難の業です。

至難であるが故に、人は努力して人を好きになることで、幸福になることができると説いているように思われます。

誰でも幸福になれる

誰からも好かれ、誰をも好きになる。そんな天然の人は、天賦の幸福者ということになります。

凡人はトレーニングが必要です。

どんな人にも興味を向け、積極的にコミュニケーションをとり、配慮を学び、相互のルールを守って、良い関係を築く、そんなトレーニングが必要になります。忍耐も当たり前にできるよう修練しなければなりません。

そして、自然に相手の存在を認め、相手に敬意を払う、「人格」を獲得しなければなりません

努力を努力と思わずに自然に人が好きになる人格を身に着けるしかありません。

幸福のためにはトレーニングと努力が必要だということです。

このことは、何を意味しているのでしょうか。

正しい努力すれば誰でも幸福になれるというでもあります。

嫌いな人に好かれようと媚びへつらう努力はおぞましいものがありますが、人としての人格を身に着ける努力は正しく美しいものです。

ラッセルが「おぞましい」と評した義務感も幸福に向けて必要な人の資源なのかもしれません。

返報性に関するブログも書いています。よろしければこちらもご覧ください。

「好意の返報性」でうまくいく説得術・交渉術のヒント(№141)

『ビル・ゲイツの幸せになる質問』中谷昌文著、自分にとっての「ペイ・フォワード」を考える(№234)

この記事を書いた人

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西口満

「気づきによる学び、自ら成長する」を支援し、ひとりひとりのウェルビーイングの実現と生産性の高い職場のチームづくりを行い、企業や社会の発展に貢献する

ビジネスリーダー育成コーチ、
人事戦略のコンサルティングをしています。

プロフェッショナルとして「人の成長」に関わり続けることをライフワークとし、少しでも誰かの成長のお役に立てれば幸いです。

ブログでは、そんな私が学んだこと、気づいたこと、感じたことを発信し、誰かの、何か、前進のヒントになればと思っています。

これからも情報を発信し続けます。

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