マネージャーの2種類の意思決定とは?権限移譲「任せる決定」で組織を発展させる

№229マネージャーに求められる能力に「決断力」があります。意思決定、決めることです。

組織はいろいろな階層、機能に分かれています。

企業では、組織規則があり、組織それぞれの職務機能が定義されています。
組織の目的や役割は何か、担当する業務内容は何か、どのような権限を持っているのか、これらのことが定められています。

2種類の意思決定

組織の責任者であるマネージャーはその定められる権限の範囲において、様々なことを決めなければなりません。

マネージャー中には、何でも自分が決めないと気が済まない人がいます。すべて自分が決めなければならないとがんばっている姿が時々見受けられます。

マネージャーに多くの仕事が集中する中、すべてを決めようとすると結果的に多くの仕事を抱え込んでしまうことになります。

意思決定の遅れから部下の業務も停滞し、自分がボトルネックとなって組織機能に支障が生じてしまいます。

どのようにすればいいでしょうか。

マネージャーの決定には2種類あります。

ひとつは業務そのものについての決定です。

方針・戦略、計画・施策の実行を決める、投資や経費支出を決める、など業務に直接かかわる決定になります。

もうひとつは、部下に「任せる決定」です。

部下メンバーに対して自身の権限を委譲し、人の配置を決めて分掌させることで、組織成果を最大化のための決定になります。

組織の抱える課題に対してどのくらい人を投入するかの決定もこの範疇に入るでしょう。

どちらも組織にとって大切な意思決定です。

しかし、私は組織開発の観点でより「任せる決定」に着目すべきではないかと私は考えています。

「任せる決定」で人材育成

マネージャーが部下に決定を任せることは人材育成につながります。

よく部下に対して「上司の立場になって考えろ」という指導をすることがあります。

自分の意思決定の一部を部下に実践的に任せることは、上司の仕事の模擬演習になります。

部下は、これまでよりも高い視座で情報を集め、考えて行動することで、新たな経験を積むことができます。部下の職務拡大・職務充実が図れます。

また、権限移譲の範囲を徐々に広げていくことで後継者育成にもつながっていくでしょう。

部下に権限移譲しても責任はマネージャーが負うことは言うまでもありません。最終的な組織の長としての責任を部下に転嫁することはできません。

もちろん、結果に対して部下に責任を問います。厳しい人事評価をつけることもあるでしょう。しかし、それは人材育成の観点での指導としての意味が強いものとなります。

権限移譲が進めば、人材育成が進みます。

「組織は人なり」と言いますが、マネジメントが円滑で人材育成が進めば組織力が向上し、組織としての業績もあがっていくでしょう。

「任せる決定」で組織を発展させる

マネージャーが部下に「任せる決定」をすることでマネージャー自身の時間に余裕ができます。

できた余裕の時間をどのように使うかです。

例えば、マネージャーの仕事が仮に100あったとします。100のうち部下への権限移譲を30行うことで、30の工数が空く。その30の工数を何に充てるかです。

まずは、任せた仕事の進捗管理、部下指導、組織内でのコミュニケーションの充実を行う、マネジメントに特化することが考えられます。組織マネジメントに注力することで、組織力をアップさせるという考え方です。

もうひとつ考え方があります。それは、マネージャー自身が新しいことにチャレンジすることです。

営業部門であれば新規顧客の開拓、新しいビジネスモデルの構築など、技術部門であれば新技術の探索、異分野技術の情報収集など、新しいビジネス創出にかかわる仕事をするということです。

チャレンジにより取り込んだ仕事は標準化して部下に任せていきます。

その時、開拓した新しい仕事を部下に丸投げするのではなく、徹底して合理化し、ルーチン化して仕事をミニマム化することが大切です。

そしてまた新しい仕事にチャレンジしていく。そういうサイクルを回していくこともマネージャーが取り組むべき課題なのではないでしょうか。

部下に任せることが増えると部下の業務量が増えていき、やがて人が足りなくなっていきます。
増員はコスト増という側面もありますが、非効率に組織を膨張させるというのではありません。
業容拡大にともなう組織の発展過程としては当然のプロセスです。

マネージャーによるチャレンジは組織の業績拡大の源になるだけでなく、組織に新しいノウハウの蓄積に役立ちます。

部下の経験は個人のノウハウでとどまることになる恐れがありますが、マネージャーが権限移譲というカタチで標準化した仕事は組織ノウハウとして浸透させることにつながります。

まとめ

昔はマネージャーはマネジメントに特化すべきという考え方が多かったように思います。権限移譲で部下育成を行うという考えもオーソドックスですが、現在も有効な考え方です。

今はプレイングマネージャーが当たり前です。

そんな中、マネジメントに特化したいという現場マネージャーの声をよく聞きます。より厳格な労務管理が必要な時代にもなってきました。プレイングとマネジメントの両立は厳しいという話です。

マネージャーのプレイングにチャレンジという組織発達の鍵があるとすれば、プレイングマネージャーをより強化しなければならないことになります。

両立のためには、勇気を持って「部下に任せる決定」をしなければなりません

マネージャーの「任せる決定」が会社の発展に貢献するという話でした。

この記事を書いた人

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西口満

「気づきによる学び、自ら成長する」を支援し、ひとりひとりのウェルビーイングの実現と生産性の高い職場のチームづくりを行い、企業や社会の発展に貢献する

ビジネスリーダー育成コーチ、
人事戦略のコンサルティングをしています。

プロフェッショナルとして「人の成長」に関わり続けることをライフワークとし、少しでも誰かの成長のお役に立てれば幸いです。

ブログでは、そんな私が学んだこと、気づいたこと、感じたことを発信し、誰かの、何か、前進のヒントになればと思っています。

これからも情報を発信し続けます。

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