2019年3月1日No.123ワンセンテンスブログです。
今回とりあげたのは、名探偵ポアロの言葉です。アガサ・クリスティ「ABC殺人事件」の中の一節。
アガサ・クリスティはイギリスの作家。「ミステリーの女王」と言われています。
引用は名探偵ポアロが相棒のヘイスティングズに語る言葉です。
会話において、何かを隠しているものほど、危険なものはないよ!あるフランスの老賢人が私に言ったことがある。話というものは、考えることを妨げるための、発明だ、とね。そしてまた、人が隠そうと思っていることを発見するための、誤りのない方法でもあるわけだ。人間というものはだな、ヘイスティングズ、自分自身をあらわし、その個性を表現するために、会話が与えてくれる機会には、抗し得ないものだよ。
(『ABC殺人事件』堀田善衛訳『世界名作推理小説大系』9、東京創元社)
隠し事をしている人から、それを聞き出そうとする時、相手を黙らせることなく、会話に引き込むことが最も効果があることだと名探偵ポワロは語っています。
いくら喋らないでおこうと思っていても、会話の中に隠していることの痕跡があらわれてしまうということで、人間は口を開けば、もはや隠し事ができない質(たち)だということなのでしょう。
名探偵ポワロは、会話の中から、真実への痕跡を辿り、心の中にあるものをあらわにしていきます。
私が携わるカウンセリングやコーチングにおいては、真実や答えはクライアントの中に必ずあることを前提に対話をします。
カウンセラーやコーチは「質問」という武器を使いながら、クライアントとの対話の中から真実や答えの痕跡を辿り、心の中にあるものをあらわにしていきます。探偵さながらの作業です。
人間が会話の中で隠し事ができない質(たち)だとすれば、カウンセリングやコーチングの場面でも、クライアントが話したいように話させるのが最も有効な方法だということに気づきます。
カウンセラーが自分の関心で聞きたいことを聞くための質問では、なかなか真実や答えに辿り着くことはできないでしょう。
名探偵ポワロの言葉から、カウンセリングやコーチングの極意を思い出すことができました。