№266 会社でのキャリアといえば、ゼネラリストかスペシャリストという2つのコースを思い浮かべます。
「僕はゼネラリストで将来は会社経営に携わりたい。」「私は研究開発のスペシャリストを目指します。」というようなことが言われていました。
私は、その2択で考えるよりもプロデューサーかテクノロジストで考えた方がよりキャリア形成の道筋が立ちやすいのではないかと考えています。
総合職コースと専門職コース
ゼネラリストとスペシャリスト。すなわち総合職と専門職です。
多くの会社で新卒を一括採用して総合職として将来の経営幹部を育てるというしくみが動いています。会社の設定するキャリアとしては王道というイメージです。(かなり古い価値観ではありますが...)
そこに、専門職が追加され、研究開発職やIT技術者等の専門技能によるキャリアも重視されるようになりました。また、経験技能を活かすエキスパート職なるキャリアコースを設定されている会社もあります。
この枠組みが良いのか?ずっとモヤモヤした感覚を持っていました。
それは、総合職、専門職、名前を英語でゼネラリスト、スペシャリスト、エキスパートと呼んだとしても、会社内の制度としてある限りは、どうしても会社内の都合でしかありません。
両コースとも”社外に通用する”という言葉を使って成長することを求めますが、ゼネラリストとしての出世は会社内の論理に負うところが大きいですし、スペシャリストとしての認定は会社内において相対的に特定分野に詳しい人材に過ぎないことが多いと感じられます。
総合という言葉がどこか大雑把で大括りで具体的なキャリア形成の方法がイメージできません。
専門という言葉も特定の分野に詳しい人ということですが、裏を返せばそれ以外は役に立たない人ということになりかねません。他に応用が利かない人材のイメージもあります。
プロデューサーとテクノロジスト
そんなモヤモヤ感の中、日経電子版でこんな記事を見かけました。
ゼネラリストでいくのか、スペシャリストになるのか」というこれまでの選択肢そのものが選択肢ではなくなり始めている
2020.6.12日経電子版「総合職でもスペシャリストでもない 10年後必要なのは」ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行氏の記事です。
そこには、キャリアを分類する切り口として、専門性を ”活用する”/”開発する” という軸が示してありました。
専門性活用型人材をプロデューサー、専門性開発型人材をテクノロジストと呼んでいます。
- プロデューサー(専門性活用型人材)
広範な知識と経験に基づく調整力にたけたゼネラリスト以上に、社内外のさまざまな人々を結びつけて収益を生み出す力を有している人材です。複数の専門領域に精通し、テクノロジストの力を借りて新しい価値やビジネスモデルを生み出す人材です。組織能力を最大化して、経営資源を効率的に活用します。 - テクノロジスト(専門性開発型人材)
限られた職域で定型的な業務に注力するスペシャリストよりも、さらに専門性が高く、仕事に必要なテクノロジーを使いこなすことができる人材です。テクノロジーは技術です。知識体系の利用方法、実用化を指しています。つまりテクノロジストは特定の専門知識の活用に重点が置かれます。特定の専門性における高度な専門職で、テクノロジーを生み出し
活用して、仕事の付加価値を高める人材です。
キャリア形成を考える時に重要なこと
この記事を読んで、キャリア形成のために大切と思われることを考えました。
まず1.専門性が前提になるということです。
プロデューサーであれ、テクノロジストであれ、いずれのキャリアにも専門性が必須となります。
キャリア形成においては、まずどの専門領域を磨いていくのか、ターゲット領域を定めましょう。
そしてその専門性を探求しつつ、関連領域へと専門性を複数に広げていきます。もちろん興味のある全く別領域の専門性に広げても構いません。
大切なことは2.専門領域を複数持つことです。複数持つ場合には広く浅くではなく、精通するまでに深く、が求められます。
専門性を磨くというのは、知識を増やす勉強を指しているのではありません。常に3.専門性を活用することが大切です。
専門性というよりもテクノロジー(技術)と言った方が良いかもしれません。
技術は使うほど熟練します。専門性を高めるということは経験値を上げるということでもあります。
持っているのは当然で実践する中で専門性を広げ、高めていきます。
専門性を活用することで得られる成果を考えなければなりません。4.専門性で成果を出し貢献するという視点です。
プロデューサーは専門性を組み合わせ、資源を活用して成果を生み出して社会に貢献します。
また、テクノロジストは新しい価値を生み出すための技術を成果として開発することで貢献します。
成果と貢献に強いこだわりを持つことが大切です。
まとめ、一番大切にすること
- 専門性を前提とする
- 専門性を複数持つ
- 専門性を活用する、実践する
- 成果を出し貢献する
専門性とどのようにかかわっていくかを軸に、これからのキャリア形成を考えなければなりません。
そして最後に言いたいことは、自分がかかわる専門性が好きかどうかです。
5.その専門性が好きなこと
唐突感がありますが、キャリアを考える時かかわる専門領域と自分自身との関係性を考える必要があります。
キャリアとして専門性を身に着け、活用していくには長い時間がかかります。
継続して関わるにはその専門領域が自分にとって興味深いこと、好きであることが大切です。
好きでない仕事は往々にして窮屈で苦痛を伴います。
人生の大半を苦行にしてはなりません。
自分にとって興味ある領域を選び、ライフワークとして付き合っていく。
そんなキャリア形成が実現できれば、素晴らしい人生が送れるのではないでしょうか。