№179ワンセンテンスブログ
佐渡島庸平さんと横石崇さんとで、「コミュニティづくりについて」の対談の中に「原っぱと遊園地」という例え話がでていました。
そこから、セミナー・ワークショッププログラムを設計する際に「原っぱのワークショップ」「遊園地のセミナー」の2つの考え方があると感じました。
今日のワンセンテンス
六本木未来大学での対談になります。
建築家の青木淳さんの話に「原っぱと遊園地」という例えがあるのですが、佐渡島さんがここで話しているのは、原っぱを作る話だと思うんです。
コミュニティをビジネスにしようとすると、どうしても至れり尽くせりな遊園地を作りたいと思ってしまいがちで、原っぱを作るのってすごく大変なことだと思うんですよ。何もないところに、何かを一緒に生み出さなきゃいけない。そして何をやってもいい。今まで遊園地的な作り方を求められてきた中で、場の作り方から変えようとしている。
六本木未来大学での講義録『1→10に広げる企画の極意』(六本木未来大学編、日本経済新聞出版社)
佐渡島庸平さん(コルク代表取締役社長)はコルクラボというオンラインサロンを主宰。週刊モーニング編集部で「バカボンド」「ドラゴン桜」 「宇宙兄弟」など、数多くのヒット作を編集した人です。
一方の横石崇さん(Yokoishi Takashi 代表取締役、クリエイティブ・プロデューサー)は ブランド開発やメディアサービス開発を手掛けておられる方です。
ワークショッププログラム設計を考える
私は人材育成でセミナーの講師をしています。
セミナー・ワークショップのプログラム設計をする時には、特定のニーズを持った受講者を想定しますが、実際には設計したプログラムの基本的な流れに沿いつつ、当日の受講生との対話から、いかに臨機応変に受講者に寄り添うかを大切にしています。
セミナー・ワークショップは、受講生が共通の目的、テーマのもと集い、情報を共有化し、気づき学ぶ 、そんな「場」である私は考えています。
今回のワンセンテンスの中の「原っぱと遊園地」の例えの中に、プログラム設計を考える上での気づきがありました。
「遊園地のセミナー」と「原っぱのワークショップ」
これまで研修プログラムの開発をする時には、講師が決めたゴールに受講者を導くために緻密なタイムスケジュールや教育コンテンツを用意するようにしていました。
この場面ではサプライズを入れよう、この場面ではアイスブレーク、このタイミングでエピソードを10分、ここで20分の演習、ワークシートの空欄を埋めてもらって、シナリオはこれで、結論はこれ。
受講者に対して講師が決めた「仕掛け」によって受講者を楽しませる「遊園地」を設計しようとしていました。
受講者を誘導し、コントロールする感覚です。
一方、それに対して「原っぱのワークショップ」というものも考えられます。
プログラムで設定されるのは、場所とテーマだけ。講師は、講師でなくファシリテーターとなります。
例えば、「リーダーシップ」「マネージャーに求められるもの」といった大きな概念をテーマとして設定し、参加者に自由に議論をしてもらいます。
ファシリテーターは、参加者に指図することはしません。参加者の意を尊重しつつ、議論の流れを大切に扱います。
必要な情報提供をする、議論にふさわしいフレームワークの提案をする、など議論が円滑に進むように場づくりに徹します。
土管だけが置いてある、ボール遊びの道具だけが置いてある、遊び方は参加者の自由といった「原っぱのワークショップ」です。
「原っぱのワークショップ」の優れた点
「遊園地」「原っぱ」のどちらが優れているというわけではありません。
「遊園地」は受講者のニーズにピッタリとハマれば多くの気づきと学びが得られます。
受講者のニーズ、レベルが合っていなければ、一定の情報は得られるでしょうが、学習効果はそれほど望めないかもしれません。
「原っぱ」は、受講者のニーズ、レベルに合わせて進められ、誰もが一定の気づきと学びが得られます。また、受講者が「場」を共有することで、新たな視点を得る可能性もあります。
「原っぱ」の欠点は、参加者の能力が「場」の限界になり、限られたこじんまりしたワークショップで終わってしまう可能性があります。また、ファシリテーターの力量に大きく影響を受けてしまいます。
しかし、「原っぱ」のいちばん優れているところは、出席しているメンバーが「受講者」ではなく「参加者・参画者」となることです。
「遊園地」が用意されたものを受講する「受け身」であるのに対して、「原っぱ」は自ら考え、議論を創る「能動的参加」となります。
積極的に参加することができるということは、学びの効果、定着が大きいことを意味しています。
ワークショッププログラムで最も大切にしたいこと
「遊園地」「原っぱ」のいずれにしても、講師・ファシリテーターの臨機応変の力量が求められます。
受講生・参加者の状態をよく観察し、状態に合わせた臨機応変の「場づくり」ができなければなりません。
セミナー・ワークショップの設計にあたっては、受講者・参加者に寄り添い、積極性を引き出すことを一番に考え、実際の運営を行っていきたいと考えています。