№182ワンセンテンスブログ
№180,179に引き続いて六本木未来大学講義録2から見つけた引用です。
菅野薫さんの言葉から「アイデアの実現」について考える機会をいただき、「ことを運ぶ力」が大切だという着想を得ました。
今日のワンセンテンス
「実現しないアイデアは存在しないのと一緒」
クリエイティブ・ディレクターの役割。最後にして最も大切な役割は、プロジェクトをちゃんと「着地させる」ことです。最初な着想された表現が、最も機能的でピュアな形で「実装される」ということは一番重要なことです。(中略)
思いつくこと自体は技術なので、勉強して訓練すれば身につくことですが、思いついたアイデアを良い形で世の中に出せる人の数は限られています。六本木未来大学での講義録『1→10に広げる企画の極意』(六本木未来大学編、日本経済新聞出版社)
菅野薫「チームでいいものを生み出す方法って何ですか?」より
菅野薫さん(電通 DCD/ Dentsu Lab Tokyo エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター/クリエイティブ・テクノロジスト)は東京オリンピック招致最終プレゼンで紹介された「太田雄貴Fencing Visualized」「SAYONARA 国立競技場 FINAL FOR THE FUTURE」など、JAAAクリエイターオブザイヤー(2014年、2016年)、国内外の広告デザインアート様々な領域で活躍されている方です。
実現しないアイデアは存在しないのと一緒
例えば、「気分を一新したいな、そうだ!! 部屋の模様替えをしよう! 壁紙を変えて、インテリアを変えて...」と次々とアイデアが生まれます。でも思うだけで、行動をしないとそのアイデアは頭に浮かんだだけでやがて忘れ去られ、誰にも知られることはありません。
行動し、アイデアを実現しなければ、家族にも友人にも知られることなく、その素晴らしいアイデアは存在しないのと同じです。
いきなり壮大な話になりますが、宇宙には無限に天体があるはず。しかし、その天体からの光が地球に届かなければ、存在を語られることすらありません。
ブラックホールも100年前にアインシュタインが理論で語っている段階ではアイデア、先日の写真撮影に成功することでそのアイデアが証明され、存在が認められるということです。
行動することで実現へ
例えば、「会社を辞めて、セミナー講師として独立事業者となる。これまでのノウハウを活かし、業界の人脈を使って、IT技術を利用して...」とアイデアを思いついたとします。
思い切って実現のために行動を起こす。しかし、思っていたほどうまく行かない。結局実現できずに別の会社で勤めることになる。
そのアイデアは「存在しなかった」のか。厳しい意味では「存在しなかった」ということなのではないでしょうか。
行動を起こし、プロセスを経験したことについては意味があります。新たな経験として、技術として自身の中に積み立てられたことになりすし、次のアイデアのタネになる。十分意味のあることです。
しかし、「セミナー講師として独立事業者となる」ということはなかったわけです。アイデアは実現されませんでした。
菅野薫氏が語る意味
アイデア発想は技術だと彼は言います。訓練すれば誰でもできます。
しかし、そのアイデアの本質を損なうことなく実装させ、きちんと実現させることは非常に難しいということを語っています。
思いつき、夢を頭に思い浮かべることは誰でもできます。しかし、思いつき・夢をカタチにすることは難しい。
先程の例で、「独立事業主になる」ということがうまく行かなかった。でも、行動が大事、プロセスが良かったということではなく、そもそも実現の力量がなかったということを率直に反省すべきです。
プロセスそのものが間違っていた、あるいはプロセスの中には成功への岐路があったはず、成功への鍵が隠れていたのに見逃していたのです。
アイデア創造は難しいと言われますが、本当に難しいのはアイデアを生み出すことではなく、アイデアを実現することだということです。
創造力は実現力、「ことを運ぶ力」
アイデア実現のプロフェッショナルがクリエイティブ・ディレクターということなのでしょう。
私たちが取り組むべきは、アイデア発想の技術はもちろんですが、アイデア実現の方法論についてきちんと学ぶことが必要です。
実現のために必要な知識・ノウハウもあるでしょう。戦略や仮想シナリオも必要でしょう。仮想シナリオを検証する力も必要です。
ひとつのプロジェクトだと考えると、計画を立て、協力者や同志も募る、根回し、下準備、たくさんの関門があるはずです。
創造力とはアイデアを生み出すことではなくアイデアの実現力を指す言葉だと言えるでしょう。
「ことを運ぶ力」を身につけることです。
「行動しないと始まらない」のも事実ですが、勇気と無謀の境目の感覚を持つことは大切です。
その他にも、菅野薫氏の言葉を取り上げたブログを書きました。
よろしければこちらもご覧ください。
・パーソナルブランディングと”新しさ 専門性”/「個性」を究めるためには「真似ぶ」ことである(№180)
・「原っぱと遊園地」/ワークショッププログラム設計の2つの発想(№179)(佐渡島庸平氏、横石崇氏の対談「コミュニティづくりについて」・六本木未来大学講義録2より)