相手にレセプターを準備させる:メッセージを伝える時の大切なこと

2019年4月17日№169ワンセンテンスブログ(コーチング)

人に話を聞いてもらうのは難しい事です。

聞いてもらえているように見えても、実は上の空で、相手が口を開くとトンチンカンな答えが返ってきたりするとがっかりします。すぐに違う話題に変えられたりすることもあります。

職場の朝礼で、注意事項や大事なメッセージを伝えたくても、メンバーは思い思いで、ほとんど聞いている様子がなかったりすることはよくあります。

そんな時は、聞く相手側に「レセプター」が準備できていないのです。

あるセミナーでの出来事

セミナーで講師・ファシリテーターをしている時の話です。

最初に研修の目的や諸注意を受講者の方々に伝えます。

メンバーは15名程度、年齢は40代前半から50代後半まで様々、私に顔を向けて目を合わせてくださる人、窓の外を眺める人、スマホをちらちらと覗き込む人、いろいろな人がいます。

働き方改革関連法案の改正内容についての情報提供のセミナーでした。

全管理職が対象で受講が義務付けられたものでしたので、受講者の関心はまちまちというよりも「仕方なく」という雰囲気がありありと雰囲気に出ていました。

受講者の方々は全員最後まで私の話を聞いてくださるのだろうか?

私は少し話を変えることにしました。

「少々話しは変わりますが、レセプターという言葉をご存知ですか?」

思い思いの行動をとっていた受講生が一瞬私に注目した瞬間になりました。

そして、次の話をさせていただいたのです。

人間の脳細胞にはレセプターという機能が備わっているそうです。

「受容器」「受容体」という意味です。このレセプターが感覚器からの情報を受け取り、記憶や知識として蓄積したり、行動として反応に繋げたりしているそうです。

但し、レセプターは情報をすべて受け取っているわけではありません。

どの情報を受け取るのかは、すでに情報を受け取る前に選択されています。つまり、あらかじめ関心を向けている情報しか受け取らないのです。

どんな有益な情報であっても、情報を受け取るレセプターがなければその情報を受け取ることはできないのです。

例えば、そろそろ車を買い替えようかな、と考えたとします。

すると町の景色が一変したことに気づきます。

町を歩いていると、道を走っている車が気になってしかたがありません。メーカー、車種、形、色、好き嫌いなどなど...。

普段、道には車が溢れていたはずなのに、これまで目に留まらなかった車が、どんどんと目に飛び込んでくるのです。

つまり、脳の中に「車」の情報を受け取るためのレセプターが生まれたことを示しています。

皆さんは、今、レセプターの準備はできていますか?

何を持ち帰るのか、どんな情報が聞きたいのか、1分間差し上げますので考えてメモをしてみてください。

受講者の皆さんは、セミナー案内を読みかえして一斉にペンを走らせることとなりました。

セミナーに対する準備が出来上がった瞬間でした。

セミナー講師としては、受講生にいかにレセプターを早い段階で作ってもらうかが勝負になります。

この時のセミナーでは、1分間の沈黙の時間(Thinking Time)をつくって、レセプターづくりを促しました。

まとめ

「人は聞きたいようにしか聞かない」と言います。私たちは、見たいものだけしか見ない、聞きたいものしか聞かない、欲しい情報しか受け取らないようになっているようです。心理学では「選択的認知」と呼ぶようです。

自分が相手に伝えたいことがあっても、相手にレセプターがなければ伝わりません。

メッセージを相手に届けるには相手のレセプターづくりから始めましょう

この記事を書いた人

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西口満

「気づきによる学び、自ら成長する」を支援し、ひとりひとりのウェルビーイングの実現と生産性の高い職場のチームづくりを行い、企業や社会の発展に貢献する

ビジネスリーダー育成コーチ、
人事戦略のコンサルティングをしています。

プロフェッショナルとして「人の成長」に関わり続けることをライフワークとし、少しでも誰かの成長のお役に立てれば幸いです。

ブログでは、そんな私が学んだこと、気づいたこと、感じたことを発信し、誰かの、何か、前進のヒントになればと思っています。

これからも情報を発信し続けます。

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