美術館を10倍楽しむ方法『知識がない人にも楽しめる美術の鑑賞術』

2018年11月3日9:30~9:55 NHK総合 助けて!きわめ人「知識がなくても大丈夫!美術館を10倍楽しむ方法」の放映がありました。

きわめ人は藤田令伊氏。アート鑑賞ナビゲーター、大正大学非常勤講師、アート情報サイトARTRAY(ブログ形式のメディア)を主宰されています。

番組では、藤井隆さん,濱田マリさん,アナウンサーの小野塚康之さんが出演されていました。

私は月に1度ぐらい美術館に足を運びます。初心者にとっては美術館そのものが敷居高く、どのように絵を見ればいいのか分かりません。

タイトルのように10倍楽しめればいいなぁと思い、興味津々で番組を見ました。

美術館で絵を楽しむコツについてメモしていましたので、簡単にまとめておきたいと思います。気軽に楽しく美術館を楽しむコツを教えてもらいました。

「絵の見方に正解はない、自由に楽しんでいい」ということだそうです。

美術館を楽しむ極意として紹介されていたポイントは次の2点です。

  1.  ざっくりの後じっくり
  2.  なりきりで妄想を膨らまそう

1.「ざっくりの後じっくり」について

美術館に行くと入場口に入ってすぐに音声ガイド(有料)の案内があります。特に企画展では音声ガイド(ナビゲーターの芸能人などの音声で紹介されていることが多い)を聞きながら楽しむという方法もありますが、今回の楽しみ方では、「先入観を入れずに自由に楽しむ」ことを考えて、音声ガイドは使わないことを勧めていました。

順路に従ってじっくりひとつひとつの作品を見ていくのが通常の見方です。
ところが、藤田氏は、まず遠目に絵を眺めながら最後まで館内を歩くことを推奨しておられました。

最初からひとつひとつ絵を見ていくと大変です。私も最初は「よ~し」と思って最初から目を凝らして真剣に見るのですが、途中で疲れてしまって休憩、やがて集中力が切れて後半戦は足早になって美術館を出てしまいます。

藤田氏は、2周巡るのがよいと言っておられました。1周目でざっくり眺める中で心の琴線にひっかかるものを見つけて心にとめておいて、2周目でその絵をじっくり見るのがよいとのことでした。

そして、「気になった絵について、言葉で表現する
さらに「3分間じっくりひとつの作品を眺めてみる

言葉で表現しようとすると、絵の隅々にまで意識がいきわたり、平面に見えていたのが、奥行き、肌の弾力まで感じられるようになります。
そしてさらに3分程度眺めてみると、初めは感じなかった気になるところがでてくるようになります。

人間の認知の仕組みはあまり見ないで済ませようとする性質」があるそうです。
その壁を乗り越えるために「言葉で説明したり、時間をかけてみると作品の隅々まで目がいっていろいろな気づきが得られる」ようになるそうです。

番組では「フェルメール 牛乳を注ぐ女」で実践していました。

タイトルは「牛乳を注ぐ女」パッと見たところ、
青い鮮やかな色のスカートの女性が牛乳を器に注いでいる、黄色い上着も艶やか、ひとり黙々と作業をしているといったところか?!

じっくりと眺めてみる。

牛乳の線が細い、そろりそろりとゆっくりと注いでいる、静寂な部屋の中で牛乳がしたたり落ちる音だけが響いているようだ。

この牛乳はこれからどのように使われるのだろうか?注がれた器はけっこう広口。

これから食事に供されるのか、料理に使うのか、移し替えて保存しておくだけなのか、17世紀のオランダの食習慣はどのようなものだったのだろう?

テーブルにはパン。結構硬そうに見える。

緑のテーブルクロスがきちんと掛けられている。テーブルの上にはスカートと同色の布、手ぬぐいだろうか?洒落た濃い緑のポットも見える。

窓は少し高めの位置、女性の身長が低いからかもしれない。

壁には籠と金色の器、壁の上方には釘が刺さっている。普段は何かが掛けられているのかもしれない。

足元の木の箱は何だろう。掃除は行き届いて無いようだ。

その他、窓の破れ、壁の下のタイルの模様も気になります。

ヨハネス・フェルメール 牛乳を注ぐ女 1660頃 アムステルダム国立美術館蔵
この絵は2018年10月5日~2019年2月3日 上野の森美術館で開催 フェルメール展にて来日中
https://www.vermeer.jp/

絵をじっくり眺めると気になる点、発見が盛りだくさんです。

2.「なりきりで妄想を膨らませる」について

作品の物語を自由に楽しむということです。

(1)コピーライターになる、絵にタイトルをつけてみる
番組ではクルーべの「波」という絵を見て、アナウンサーの小野塚康之さんは「ザ・ジャパニーズ」と答えていました。日本映画の最初に出てくる映像をイメージしたようです。

ギュスターヴ・クルーベ「波」国立西洋美術館蔵(常設展で見ることができます)
http://collection.nmwa.go.jp/P.1959-0062.html

タイトルを自分でつけると、より作品に突っ込んでみたくなる、もう少し見たいなという感情が湧いてきます。

コピーライターになることで、自分のもののように感じ、作品に入りやすくなります

(2)シャーロックホームズになる

絵の人物が何をしゃべっているか?考えてみる。思い切って妄想を膨らませてみる、というものです。
そうすることによって作品がイキイキと立ち上がってきますし、その絵が自分にとっての作品になります。

絵には画家が描いた本当の物語がありますが、気にする必要はない、自由な見方をすると、作品をより楽しめる。

こういう見方というのはよくないと考えて、自分なりの見方というものを封じ込めてしまう方が個人の鑑賞ではよくない、と藤田令伊さんはおっしゃっていました。

番組では、フラゴナールの絵で実践していました。

まずタイトル付けから。

藤井隆さんは「靴飛ばすわよ!」、濱田マリさんは「キック!」と叫んでいました。

藤田令伊さんは、藤井さんと濱田さんのタイトルを聞いて、すでに2人が女性の快活な人物像を想像して見抜いている、と指摘されていました。

本当のタイトルは「ブランコの絶好のチャンス」です。

つまり、ブランコ下で男性が女性の下着をワクワク気分で覗いている絵だったのです。

ジャン・オノレ・フラゴナール「ブランコの絶好のチャンス」ルーヴル美術館
https://www.musey.net/12351

番組では絵の人物にセリフをつけて、なりきりで楽しんでいました。
画家による本当の物語の正解は参考程度がよいようです。

作者にとっての作品ではあるのですが、「自分たちにとっての作品と考えて自分なりに楽しむこと」が絵を楽しむコツだとのことです。

最後に

このように自分なりの楽しみ方をすることを、「主体的な見方」として紹介されていました。

今まで美術館へは、混んでいる企画展ばかりに足を運んでいましたが、空いている常設展を気ままに自分なりに楽しむことにもチャレンジしてみます。

地方へ出張した時にその土地の美術館にふらりと入ってみるのもいいなぁと思いました。

たまたま見た番組でしたが、これまでより10倍美術館を楽しめるような気がしてきました。

次の機会が楽しみです。

きわめびと 藤田令伊さん(ふじたれい) 大正大学文学部講師、アート情報サイトARTRAY(ブログ形式のメディア)を主宰、ユニークな美術の鑑賞術で話題

書籍:
「芸術がわからなくても美術館がすごく楽しくなる本」(単行本)
「企画展がなくても楽しめるすごい美術館 」(ヴィジュアル新書)
「アート鑑賞、超入門! 7つの視点」 (集英社新書)

この記事を書いた人

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西口満

「気づきによる学び、自ら成長する」を支援し、ひとりひとりのウェルビーイングの実現と生産性の高い職場のチームづくりを行い、企業や社会の発展に貢献する

ビジネスリーダー育成コーチ、
人事戦略のコンサルティングをしています。

プロフェッショナルとして「人の成長」に関わり続けることをライフワークとし、少しでも誰かの成長のお役に立てれば幸いです。

ブログでは、そんな私が学んだこと、気づいたこと、感じたことを発信し、誰かの、何か、前進のヒントになればと思っています。

これからも情報を発信し続けます。

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