本書は、ファシリテーションの実践の書です。
会議中に発するあなたの「ワンフレーズ」が会議の流れを大きく変え、だらだらした会議が仕事を前進させるための締まった会議に変身します。
そんな「ワンフレーズ」が200フレーズ、ケースに合わせて紹介されています。
ファシリテーション実践に苦労している人、「会議なんて無駄」と思っている人にお勧めです。
「会議を変えるワンフレーズ」
堀公俊 著 朝日新聞出版
会議といえば、退屈、無駄、ダラダラ、といったイメージ。
抜け出すとすれば、1.理由をつけて出席しない 2.会議中に内職する 3.会議を変える、3つの選択肢があります。
本書では、「3.会議を変える」ための「技」としてファシリテーションスキルを使った発言「ワンフレーズ」が紹介されています。
ファシリテーションとは
ファシリテーションの意味は「促進する」「容易にする」というのが原意です。
会議に限らず、問題解決、教育などあらゆる集団活動を「前へ進める」支援をする「技」のことを指しています。
また、リーダーシップのあり方のひとつでもあります。旧来のリーダーシップが「何が正解か」を示してメンバーを統率するのに対して、ファシリテーションは「どうやったら正解が見つかるか」のプロセスをリードするリーダーシップでもあります。
会議の場面においてリーダーシップを発揮する
ファシリテーターと言えば会議の進行役のこと。出席メンバーは関係ないと思っておられる方も多いと思います。
会議におけるリーダーシップは、司会者や主催責任者が発揮するだけでなく、出席メンバー誰もが発揮することができます。
誰もが会議のプロセスに積極的にかかわるリーダーシップ(ファシリテーターシップ)を発揮することができるのです。
隠れファシリテーターになろう
メンバーとしての発言、例えば「〇〇についてはまだ結論がでていないように思います。」「よく分からないので教えてください。つまり、〇〇さんの意見はこういうことですか?」「今日の会議のゴールを教えてください。」など、会議で押さえておくべき事項をさりげない発言により整理を促す、こんなことが可能なのではないでしょうか。
ファシリテーターとしての進行役でなくても、出る杭にならず陰から会議を支える「隠れファシリテーター」になることができるはずです。
「できる人」はプロセスについて意見を出す人です。
「ワンフレーズ」を少し紹介します。
本書では、会議の起承転結の場面に即してまとめられています。私が特に注目したフレーズを紹介します。
『起』歩調を合わせ、参加を促すフレーズ
「今日は何をどこまで詰めるのでしょうか?」
会議の招集案内では「〇〇について」と議題の記載があっても会議の目的や成果(アウトプット)がはっきりしないものが多く見られます。
会議が始まっても、会議終了時にどのような状態になっていることを目指すのかが分からないうちに時間切れなんてことも。
そんなことにならないように最初に会議のゴールを決めて、メンバーで共有する必要があります。終わりが決まっていると「締め切り効果」もあり議論が進みやすくなります。
『承』議論を整理し、思考を深めるフレーズ
「中でも重要なのは、どれなのでしょうか?」
会議が進み、それぞれが意見を述べる場面。中にはあれこれと欲張りにたくさんの意見を盛り込みすぎる人がいます。そんな時のフレーズ。「いろいろご意見を聞かせていただきましたが、中でも一番大切だと思っていらっしゃるのは何ですか?」「どれも大事だと思いますが、あえて優先順位をつけるとすればどれですか」と質問をします。
意見が整理され、その方が一番の言いたいことがはっきりするだけでなく、言いたいことを言ったというその方の感情にも配慮することができます。
『転』機軸を定め、突破口を拓くフレーズ
「ここまでの話をざっとおさらいしませんか?」
議論がどうどうめぐり、万策が尽きたかに思える膠着状態の時、少しクールダウンすることで流れが変わったり、新しいアイデアが生まれたりすることがあります。
その時にこのフレーズです。
これまでの議論を振り返ることで、クールダウンするとともに行き詰っている原因が全体から見て些細なこだわりだったことに気づくこともあります。
「少し休憩してはいかがですか」と声をかけるのも有効なフレーズです。
『結』合意を創造し、成果に導くフレーズ
「誰がいつまでに何をするのか、決めておきませんか?」
会議の終了時間が近づいてきました。議論の末、ようやく合意にこぎつけましたが、いざ実行する段になると誰も手を上げようとしません。
そんな時にこのフレーズが効きます。
責任者を決め、何をいつまでにやるのか、実行計画を決めるよう促すのです。会議終了時に、出席者それぞれの次のアクションが決まっている状態をゴールとしなければなりません。
最後に
著者の堀公俊さんは、組織の中で繰り返し起こっている問題の元凶は“固定観念“にあると言っています。
会議では、「権限のある人、経験者の意見に従うべき」のような固定観念があります。
そうやって固定観念の非合理性を立証しながら、少しずつ風穴を開けていく。それしか硬直した会議を変える手立てはありません。正面突破を避けて、ゲリラ戦を挑もうというのです。
どんな人でも、少しの勇気と覚悟があれば、会議は変えられる。固定観念に負けず、諦めず、したたかに、粘り強く働きかけるよう皆を励ましています。
そして最後に、こんな言葉で本書を締めくくっています。
「思考」は「言葉」にしないと伝わりません。
「言葉」は「行動」しないと成果を生みません。
「行動」は「習慣」にしないと継続できません。