内省のためにWhyではなくWhatを使う(明確な内省で前進する)

№251 コーチ・エィのCOACH’S VIEWの記事に「WHYを手放せ!」という記事がありました。

メーカーで働いていていたということもあり、「なぜ」の質問を多用する癖がありました。

モノづくりの現場では、特にQC活動では真の原因を追及することが求められており、問題解決には「なぜ」を5回繰り返して問うといった態度が徹底されています。

そんな中、「WHYを手放せ!」というタイトルにもの凄く興味を惹かれました。

今日のワンセンテンス

「WHYを手放せ!」
出典『COACH’S VIEW』(ブログ記事 株式会社コーチ・エィの内村創氏)

自分のことを知っているか?

良いコミュニケーションに向けての第一歩は自分を知ることです。

ところが私たちは自分のことをよく知っているつもりでも実はよく知りません。

今はこの仕事を優先すべきなのについメールの処理を優先してしまう。

健康に良いのでジョギングを習慣にしたい、いざとなると来週からにしようと先送りしてしまう。

言い過ぎてしまった相手に謝るチャンスは今と分かっていてもなかなか声がかけられない。

頭では分かっていても意図通りに動かない、こんなことで自分のことが分かっていると言えるのでしょうか。

内村氏は、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『21 Lessons』の最後の章の一節を引用します。

自分の呼吸を観察していて最初に学んだのは、これまであれほど多くの本を読み、大学であれほど多くの講座に出席してきたにもかかわらず、自分の心については無知に等しく、心を制御するのがほぼ不可能だということだった。

どれほど努力しても、息が自分の鼻を出入りする実状を10秒と観察しないうちに、心がどこかにさまよいだしてしまう。私は長年、自分が人生の主人であり、自己ブランドのCEOだとばかり思い込んでいた。

だが、瞑想を数時間してみただけで、自分をほとんど制御できないことが分かった。私はCEOではなく、せいぜい守衛程度のものだった。

なるほどと思いました。自分に意識を向け続けることすらできない自分を発見しました。確かに自分を制御するというのは難しいです。

複雑な自分の感情の動き

続けて、内村氏はピクサー・ディズニーアニメーションの「インサイド・ヘッド」を紹介します。

主人公ライリーの頭の中には「喜び・悲しみ・怒り・恐れ・嫌気」という人間の五大感情のキャラクターがおり、ライリーを幸せにするためにそれぞれのキャラクターが奮闘する物語です。

私たちの感情は複雑です。

確かに「自分のことが分かっているか」という問いに対しては答えを出すことができなさそうです。

物語では、感情が入れ代わり立ち代わり主導権を争う中で、主人公ライリー自身が感情の争いに気づき、それらを踏まえた行動ができるようになっていきます。

人間の成長物語です。

WHYを手放す

この複雑な自分自身の内面をどのように見ていけばいいのでしょうか。

組織心理学者のターシャ・ユーリック氏によると内省の時に「Why」ではなく、「What」の問いを使うのが良いそうです。

振り返る時に「何故そうしたのか」と自分に問いかけてもうまくいきません。自分を正当化してしまうために客観的な態度で内省ができないそうです。

部下の遅刻に対して「何故遅刻したのか」とWhyで問いかけると言い訳しか返ってきません。

Whyの質問は責任を問う詰問に聞こえてしまうため、自分を正当化する言い訳が答えとして返ってくるわけです。

Whatの質問に変えるとどうでしょうか。

「遅刻に至るまでに何が起こっていたのか、どのような気持ちだったか」「何が間に合うことを妨げたのか」「遅刻しないためには何をすればよかったのか、これから何をするのか」などなど。

同じ遅刻理由を考えるにしても少々持って回った言い回しにはなりますが、Whyと違って冷静に考えることができるのではないでしょうか。

コーチングでは相手に対してWhyを多用しないように気を付けていますが、自分に対する内省でも同じことが言えることに気づけたのは大発見でした。

HowよりもWhatを使う

Howという言葉も多用されているのではないでしょうか。

「どう思う?」「どうすればいい?」「どんな話をしようか」「どう言えばいいのか分からない」

「どう」「どんな」という質問は必ずしもHow(どのように)を意味しているわけではないかもしれません。

しかし、「どう」「どんな」という言葉は相手に曖昧な投げかけとして非常に便利です。

ハッキリと質問しなくても何となく相手は答えてくれます。会話に困った時、「どう?」とさえ投げかけておけば、「どうって...そうだなぁ...」と話を始めてくれます。

逆に、曖昧な質問に対しては明確な答えは返ってきません。

明確な答えが欲しい時には、Whatを使った方が質問に対する正確な答えが期待できます

「リーダーシップを発揮するためにどうすればいいですか」と質問するよりも「リーダーシップを発揮するために必要なものは何ですか?」あるいは「必要な行動は何ですか?」と質問した方がシャープな質問になります。

Whatはモノゴトを客観的に問う疑問詞であり、ピンポイントに対象を指す言葉でもあります。

私たちはうまくいったことうまくいかなかったことを日々振り返ります。

運が悪かったと自分を正当化したり、自分を責めて落ち込んだりします。

WhyやHowを使った振り返りではなかなか前進しにくいのではないでしょうか。

ただ漠然と振り返るのではなく、Whatを使うことで客観的に課題を明確にした内省をすることができます。

できるだけWhatで考える習慣を身に着けたいものです。

この記事を書いた人

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西口満

「気づきによる学び、自ら成長する」を支援し、ひとりひとりのウェルビーイングの実現と生産性の高い職場のチームづくりを行い、企業や社会の発展に貢献する

ビジネスリーダー育成コーチ、
人事戦略のコンサルティングをしています。

プロフェッショナルとして「人の成長」に関わり続けることをライフワークとし、少しでも誰かの成長のお役に立てれば幸いです。

ブログでは、そんな私が学んだこと、気づいたこと、感じたことを発信し、誰かの、何か、前進のヒントになればと思っています。

これからも情報を発信し続けます。

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