Blog. №0277 本当に結果を出したいのなら、職場の関係の質を上げることから始めましょう。
職場でよくみられる光景です。
「売上が足りない、利益が足りない」組織を預かるマネージャーにとっては頭の痛い場面です。社長からプレッシャーがかかる。部下に対して「何とかしろ」「もっと業績にこだわれ」と叱咤激励する。部下に任せきれず細かく指示を出すようになり、「あれはやったのか、これはやったのか、なぜやらないんだ」というのが口癖になる。
一方の部下は、何とか結果を出そうと努力するもののうまくいかない。自分なりに工夫をしてやってみると上司からは「なぜ指示通りやらないんだ」と叱責される。報連相をするにも上司の機嫌の良さそうなタイミングを見計らって上司に恐る恐る話しかける。トラブルは自分で解決しようとすることでことを大きくしてしまう。ちょっとしたミスは隠してしまう。
上司はイライラ、部下は戦々恐々。
どの職場にもあるあるのストーリーです。
上司は「チャレンジだ」と言葉には出しながら、部下のチャレンジに対して「余計なことをするな」「やることをやってから、結果を出してからにしろ」と封殺する。これも職場のあるあるではないでしょうか。私がコーチングでクライアントから受ける相談で、部下が新しいことにチャレンジせずに困っているというテーマになることがよくあります。よくよく聴いてみると実は日頃の口癖が「まず結果を出せ、効率を考えろ」だったりすることがあります。
結果を問うことから始まる組織づくり
このような職場で果たして業績はあがっていくでしょうか。
上司が部下に結果を求めることは当然です。当たり前のことをしたつもりが状況は悪くなる一方。結果を求めれば求めるほど、悪循環に陥ってしまうというストーリーです。
こちらの図をご覧ください。
先ほどのストーリーは、「結果の質」を起点としたサイクルになっています。
どういうことかと言うと、売上が上がらない、利益が足りないといった「結果を問うことから始まる組織づくり」になっているということです。
「結果」を起点とするコミュニケーション、特に「悪い結果」を中心とするコミュニケーションには、上司のイライラや不満、悪しきプレッシャーが含まれています。部下にとっても結果が出ないことについては「忙しい、報われない」など不平不満の種になっています。
この職場のイライラは、上司と部下の「関係の質」を低下させます。
上司は部下に細かく指示命令し、部下はやらされ感が募ります。上司からの叱責が増えることで、部下は上司を恐れ、機嫌を取り、反発する部下も出てきます。
職場での関係性が悪くなれば、「思考の質」はネガティブに振れていきます。
上司は部下に対して「うちの部下は指示待ちが多い」と愚痴を言うようになり、部下に任せることがなくなります。ますます細かい指示命令をし、細かい報連相を求めることで職場の関係性を崩していきます。部下は、指示通りやっていれば良い、うまくいかなくても指示をした上司の責任で自分には責任はない、諦めからの事なかれ、受け身の考えが浸透します。新しいチャレンジも委縮した部下には期待できません。仕事が面白くなくなり、最悪は退職してしまう結末になるかもしれません。
職場の思考の質が落ちれば当然「行動の質」も落ちてしまいます。
部下は自発的に行動しないことから、上司はますます細かく指示命令をしなければならない羽目に陥ります。デキル部下に仕事を集中することになり、過重労働や不公平感が生まれます。
結果、業績は目標達成ならず、ますますイライラが募るということになり、さらに関係・思考・行動の質の低下を招くといった具合です。組織の生産性は低下の一途です。
皆さんの職場ではこのようなBADサイクルに陥ってはいませんか。
信頼関係の構築から始まる組織づくり
では、このBADサイクルから脱却するにはどうしたらいいでしょうか。
こちらのグッドサイクルの表をご覧ください。
BADサイクルは「結果の質」を起点としていたことに対して、GOODサイクルは 「関係の質」を起点としています。つまり、「信頼関係の構築から始まる組織づくり」です。
まず「関係の質」を変えていくことに取り組みます。
任せ=任される信頼の関係づくりです。上司と部下の関係を上意下達の一方通行ではなく、双方向で対等な関係に改めます。部下が気軽に臆することなく上司に話しかけることができ、上司は否定することなく部下を受け入れる、そんな関係づくりを目指します。いわゆる「安心安全な職場」というやつです。職場でのコミュニケーションが良くなることで、仕事の意味や目標が日常的に共有され、細かい指示命令は必要なくなります。自然と報連相が増え、進捗確認、トラブル対応などがタイムリーに行われるようになります。
「関係の質」が変わると「思考の質」が変化します。
信頼関係によって、職場でのコミュニケーションの量や質が上がっていくと、ポジティブな発想がどんどん生まれるようになります。職場での創発が始まります。チャレンジを妨げるものはなくなり、仕事が面白くなります。仕事が自分ごとになり、責任に対する意識が変わります。
仕事に対する認識が変われば「行動の質」も変わります。
もはや部下は「指示待ち」ではありません。自分で考え動きます。顧客の現場での見聞きした情報でスピーディに判断し、行動するようになります。いわゆる自立型社員が育ちます。また、上司は部下に任せることで組織にとってより重要な業務に時間を使うことができるようになるでしょう。
こうなると「結果の質」の向上は明らかです。売上、利益など業績目標は達成です。
結果が出ることで、これが成功体験になってさらに信頼関係が強いものとなり、ポジティブに考え、新しい行動が生まれ、更なる結果につながるという正のサイクルがスパイラル的に回っていきます。
これがいわゆるダニエル・キムの組織の成功循環モデルです。
「関係の質」から手を付けるマネジメントにチャレンジ
皆さんの組織ではどんなサイクルが回っていますか。
現実のビジネスでは、結果が求められます。業績を上げないと元も子もありません。
信頼関係が大切なことも分かっていますが、私たちの現場ではそう理屈通りにうまくいくものではありません。
現場のマネージャーは日々忙しく、生身の人間を相手にしています。
だからと言ってこのまま手立てなく、放置するわけにもいきません。
近年、マネジメント研修としてコーチングや1on1が主流となっているのは、「関係の質」の向上が成果への近道だとされているからです。
成功循環モデルを下敷きにしたマネジメントを職場マネジメントの方針にする。
「関係の質」から手がけるマネジメントにチャレンジしてみませんか。
【今回のまとめ】
- 売上や利益などの結果を問うことから始まるマネジメントは、結果的に実績があがらない。
- 信頼関係を起点とするマネジメントから始まるマネジメントの方が、結果的に実績がでる。
- 成功循環モデルを組織マネジメントの下敷きにする。
※「成功循環モデルは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授の提唱したモデル」
組織の状況に応じたマネジメント研修を設計いたします。
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