2018年9月17日、天籟能の会での仕舞、狂言、能の鑑賞の後、能と刀剣についてのアフタートークがありました。
話し手は、内田樹氏(武道家)、川﨑晶平氏(刀匠)、安田登氏(下掛宝生流能楽師)、そして、いとうせいこう氏(小説家、ラッパー)が飛び入り参加です。
能、刀剣だけでなく神さまの話などなど、「へぇ、そうだったんだ!」と感心する話が盛りだくさんでした。
記憶を頼りに少し紹介します。
能「小鍛冶 白頭」が終わり、厳かな雰囲気が残る中、能舞台に話し手4名が現れました。
刀匠の川﨑さんが一振りの刀剣を抱えて登場、対談の真ん中の刀剣台に飾られました。
すると、武道家の内田さんが刀剣にすり寄って、子供のように「欲しい」と川﨑さんにおねだり、会場に笑いが起こり、緊張の空気が和やかな空気に変わったところで、トークが始まりました。
トン・テン・カン、トン・チン・カン
刀鍛冶の場を想像すると白装束に身を包んだ刀鍛冶達が、ゴォゴォと燃え盛る炎の中から真っ赤になった鉄を取り出し、汗いっぱいにハンマーで叩く、工房に金属音が鳴り響く、そんな光景を思い描くのではないでしょうか?
師匠は一番小さい槌を使ってリズムをとりつつ、弟子は重い大きな槌を使います。師匠、熟練の弟子、若い弟子の3人での作業です。
トン・テン・カン、トン・テン・カン、トン・チン・カン。
どうやら若い弟子がミスをしたようです。
打つ音が揃わない様から転じて、ちぐはぐな様子、間抜けなことをトンチンカン(あて字で「頓珍漢」)というようになったそうです。
なお、師匠の鎚の合間に弟子が鎚を入れることを「相鎚(あいづち)・相槌」と言い、会話で頷いて調子を合わせることを合い槌と呼ぶようになったそうです。
鍛冶場には女神さま
刀匠の仕事場は結界の場、常に身を清めて入るようにしているそうです。
時代劇だと、井戸からの水を被って、というイメージがありますが、さすがに現代では水垢離はしないとのこと、お風呂に入るようにしているそうです。
鍛冶場の守り神は、女性の神さまだそうです。金屋子神(かなやこしん)と言い、鍛冶屋さんに古くから信仰されている火をつかさどる神さまです。
鍛冶場での古いしきたりでは、昔は女性を鍛冶場に入れないとか、鍛冶場に入る前は女性を遠ざける風習があったそうです。神さまが嫉妬深く、刀匠に怪我を負わせたり、事故を起こすことが信じられていたそうです。
まだまだ話は続きますが、それは次回に。