成長は目標達成なのか
私たちは日ごろ、「成長」という言葉をどのように使っているでしょうか。
仕事の現場では、
「目標を達成した」
「前よりできるようになった」
「一定の基準を満たした」
といった状態を指して、「成長した」と表現することが少なくありません。
つまり、成長とは**「ある状態に到達すること」**として捉えられているのです。いわば、「到達型」「評価型」の成長観です。
この見方には分かりやすさがあります。
何ができるようになったのか、どこまで到達したのかが明確であるため、評価や育成の場面でも扱いやすいからです。
たとえば、資格取得はその一つの分かりやすい例でしょう。
試験に合格するという明確な基準があり、それを満たすことで、自分の前進を実感しやすい。知識を身につけること自体も、もちろん大切な学びです。
ただ、実務の現場に立つと、別の側面も見えてきます。
資格を取ったことで、基礎的な理解が深まり、自信がつくこともあるでしょう。
しかし実際の現場では、理論通りに進まないことも少なくありません。状況が複雑だったり、相手との関係が絡んだりすると、知識だけでは判断しきれない場面に出会います。
そのとき必要になるのは、覚えたことをそのまま当てはめる力ではなく、経験を通して考え、試し、振り返りながら、自分なりの理解へと深めていく力です。
成長は、基準に到達した時点で終わるものではなく、その後の経験の中でさらに深まっていくものではないでしょうか。
成長を「ダイナミズム」として捉える
このように考えると、成長を「ある状態への到達」としてのみ捉える見方には限界があることが見えてきます。
第一に、その見方では、成長の途中にある葛藤や迷いに気づきにくくなります。
到達点だけに注目すると、「できたか、できないか」が中心になり、その過程で何を考え、どのように試行錯誤していたのかが見えにくくなります。
しかし、実際には、その過程にこそ成長の契機があります。
もし結果だけで判断してしまえば、その過程にあった学びの可能性に気づかず、成長の機会を逃してしまうことにもなりかねません。
たとえば、部下育成に悩む管理職がいたとします。
最初は「もっと細かく指示すべきか」「任せるべきか」と迷います。
実際にやってみると、細かく関われば主体性が育たず、任せすぎれば放任になってしまう。
その経験の中で、「相手の状態によって関わり方を変える必要がある」と気づいていきます。
この気づきは、最初から知識として持っていたものではありません。
葛藤や迷いを学びに転換するプロセスの中で生まれたものです。
ここに成長のダイナミズムがあります。
経験の中で違和感を覚える。
その違和感を振り返る。
なぜうまくいかなかったのかを考える。
そこから新しい意味を見いだす。
そして次の実践へ向かう。
このプロセスを通して、学びは深まり、経験が**「腹落ち」**していきます。
知識として理解していたことが、自分の経験として定着していきます。
だからこそ、成長は**「ダイナミズム」**として捉える方が実態に近いのです。
マネジメント・スパイラルが示す成長の姿
このように、葛藤や迷いを学びへと転換していくプロセスの中で、成長は生まれていきます。
そして、この成長の動きを体系的に捉えようとするのが、**「マネジメント・スパイラル」**という考え方です。
これは、マネジメントの成長を、一度の成功や達成で終わるものとしてではなく、実践の中で繰り返し深まっていくプロセスとして捉える見方です。
その動きは、たとえば次のように表すことができます。
実践 → 葛藤 → 省察 → 意味づけ → 構想 → 再実践
まず現場で実践する。
すると、思うようにいかないことや、割り切れない問題にぶつかる。
その葛藤を振り返り、自分は何を見落としていたのか、何が起きていたのかを考える。
そこから経験に新しい意味を与え、次はこうしてみようという構想が生まれる。
そして再び実践へ向かう。
この循環が繰り返されることで、マネジメントは少しずつ深まっていきます。
たとえば、「部下に任せる」というテーマでも同じです。
最初は、細かく口を出しすぎないようにしようと考えて任せてみる。
ところが、今度は方向性がばらつき、チームとしてのまとまりが弱くなる。
そこで、「任せること」と「必要な場面で方向づけること」は両立が必要なのだと気づく。
この気づきが生まれると、次の実践は以前とは違うものになります。
このように、経験の意味が深まり、実践の質が変わっていきます。
この繰り返しが、成長をらせん状に深めていきます。
ここに「完成」はありません。
マネジメントは、状況や関係の中で常に変化し続ける営みだからです。
だからこそ、成長は固定的な到達ではなく、**「変化し続ける営み」**として捉える必要があります。
生きた成長は動きの中で生まれる
成長を目標達成として捉える見方は、分かりやすく有効です。
しかし、それだけでは、生きた学びのプロセスは見えてきません。
人は、葛藤し、迷い、立ち止まりながら変わっていきます。
そして、その経験を振り返り、意味を見いだすとき、成長が起こります。
マネジメント・スパイラルは、その動きを捉えた考え方です。
それは、実践の中で葛藤を経験し、それを学びに転換しながら、思考と視座を深めていくプロセスです。
成長とは、どこかに到達して終わるものではありません。
揺れながら、問い直しながら、少しずつ深まっていくものです。
そして、その動きの中でこそ、**「生きた学び」**が生まれるのではないでしょうか。
では、あなた自身の経験を振り返ってみてください。
あなたの成長は、どのような葛藤や迷いの中で生まれてきたでしょうか。
そして、その経験を、どのように次の実践につなげているでしょうか。
参考ブログ