2018年12月1日、株式会社コーチ・エィ主催のコーチングワークショップに参加しました。
コーチとしてのコーチングを行うというのではなく、コーチング型のマネジメントを行うという視点から学びを深めることができました。
より高い生産性・業績のためには行動変容が必要
組織においてマネジメントを行う時、組織としてより高い生産性や業績をあげ続けるためには、自分を含む部下メンバーにこれまでとは違う行動、行動変容や成長が求められます。
行動が変わるということは、
- スタート(何かを始める)
- チェンジ(何かを変える)
- ストップ(何かをやめる) ことです。
では、私たちはどんな時に仕事のやり方、仕事への取り組み方・姿勢、行動を変えるのでしょうか?(演習で考えました。)
- 本気になった時、納得できた時、覚悟ができた時、危機感が強くなった時
- 失敗した時にやり方を変える、成功体験による学習をした時
- 褒められた時、認められ評価された時
- 夢を持った時、本当にやりたいことに目覚めた時
- 環境が変わった時、異動した時、役割が変わった時、上司が変わった時、ルールが変わった時
- 上司からの強制があった時(納得しなければ元に戻ってしまう)
様々な理由がありますが、継続的に必要な変化を起こしていくためには、やはり本人の内的動機が必要となってきます。
「行動を変える」を考える時に、新しいことを始める、今のやり方とは違うのやり方に変える、という発想は思い浮かびますが、「やめる」という発想は意外と抜けてしまうのではないでしょうか。
「やめる」ということも変える行動の選択肢の中に入れておくという「気づき」が得られました。
コーチングとティーチング
部下育成のためのアプローチとして、コーチングとティーチングがあります。
ここで、双方のメリット、デメリットを考えましょう。(演習で考えました)
「コーチング」...自分で考えること
(メリット)
- 気づきにより自ら納得することで行動変容に繋がりやすい、自分で考え自発的な行動を促す
- 双方向のコミュニケーションにより十分な意思疎通が図れる
- 部下が主役のコミュニケーションで部下との信頼関係が築ける(深まる)
- 新しい発想が生まれる可能性がある、創造的
(デメリット)
- 時間がかかる、非効率的、まわりくどい、緊急性に欠く
- 個別的で大勢を対象にできない、好き嫌いや人により向き不向きが生じる恐れがある
- 育成内容が不確か、マニュアル化できない、必ず成功するとは限らない
「ティーチング」...教えてもらうこと
(メリット)
・直接的でスピーディ、効率が良い
・教育の全体が見通せる、カリキュラムなど体系的教育が可能、教育内容が見える
・マニュアルを活用するなど、決められた手順を守る必要のある業務を教えるのに向く
(デメリット)
- 自分で考えない、受け身的、指示待ちをつくる恐れがある
- コミュニケーションが一方的で上意下達になりがち
- 能力伸長に上限(限界)がある(教える人を超えられない)
コーチングを学んでいるとティーチングよりもコーチングの方が優れた育成方法という思いに偏ったり、コーチングの持つデメリットから抜け出せなくなったりすることがあるので注意が必要です。
組織人としてマネジメント実践の場面では、時と場合によってコーチングとティーチングの両方を駆使することが必要だという結論になります。
組織マネジメントでコーチングを使う時に、忘れてはならないことだと改めて心に留め置きました。
コーチングが有効な場面とは?
マネジメントでコーチングを使う時にコーチングそのものの目的をキチンと押さえておく必要があります。
つまり、コーチングの目的は
『「質問(問い)」を中心においた「対話」によって、部下の目標達成に向けての自発的な行動を促進すること』
にあります。
部下の自発性を促す場面でない場合は、ティーチングを主体として必要な知識・経験・技能を教える指示、指導、助言が必要であり、情報提供をしなければならないということもあります。
部下の成長のためには、うまくミックスさせることが大切だということでしょう。
ちなみに、コーチングが有効な場面は以下の通りとなっているようです。
- 目標達成、業績向上、生産性向上
- 課題創造解決、業務改善、、目標設定
- 組織マネジメント、・将来のビジョン
- 人間関係の構築
- 人材育成、能力開発、リーダーシップ
- スキルアップ、パフォーマンスの向上、タイムマネジメント
- キャリアアップ
などなど、急がないけれどもじっくり取り組む必要のある重要な事項というものがあてはまりそうです。
コミュニケーションはキャッチボール
ワークショップの中で、コミュニケーションを「キャッチボール」に例えたボール(毬)を使った実演がありました。
受講生代表と講師の方との間で実際にボールをやりとりし、相手に届かないボールを投げたり、強いボールを投げたり、複数のボールを同時に投げたり、背中にぶつけるように投げたり。
ボールを言葉に置き換えると上司部下の普段の会話になぞらえることができ、いかに受け取りやすいボールを投げるか、部下からのボールをしっかりと受ける、そして返す、キャッチボールの大切さを感じ取ることができました。
コミュニケーションの成立には、どのような双方向のやりとりが大切かということを肌で感じ取ったような気がしました。
コーチングと「対話」を分けて実践してみる
コーチング型マネジメントを実践する上で、おもしろい方法を学びました。
(実践の手順)※私の解釈にもとづきます
- コーチング...
開始にあたって部下にコーチングの同意をとり、時間を決めます。部下に問いかけ、部下の話を聞きます。
まずは、セットアップが大切で、部下にコーチングの理解がない場合は特にこれから特殊な対話を行うという心構えをさせる必要があります。
部下の警戒を解いて普段とは違うコミュニケーションですが、安心安全な場であることを伝えます。
「これからコーチングという質問を中心とした対話をする中で一緒に考えたいけど、いいかな?」から始めます。 - コーチングを終了する...
約束の時間通り、いったんコーチングセッションを終了します。 - 「対話」を行う...
コーチングで話した題材についてマネジメントを行う。
コーチングでの部下の話したことについて肯定的に承認をし、引き続き意見を聞かせてほしいこと、この場が安心安全な場であることを伝えるところから「対話」を開始します。
コーチングでの題材について、フィードバック、提案などを一緒に考える姿勢を崩さず、上司の視点からの修正をします。
その時はI(アイ)メッセージやWeメッセージで伝えるのがいいでしょう。
必要に応じてティーチングを加えることもOKとのことでした。部下の疑問点、心配な点、予想される障害を解決し、これからの部下の具体的な行動を決めます。 - 完了させて次の約束をする通常のコーチングでは、1~4の手順を一度のコーチングセッションとして行いますが、この手順は「質問・聞く」+「対話」というようにコーチングを区切って実施するものです。
この方法にいくつかの優れた点があることに気づきました。
- コーチングが組織に未導入だったり、コーチングそのものが十分に理解されていない場合に、手順1でコーチングという日常とは違うコミュニケーションが浮き彫りになり、円滑に進めることができる。
- 手順1を充実させることで、部下が主役のコミュニケーションがとれ、部下の話を徹底して聞くことができる。
- 手順2では、部下育成を意識しつつ組織マネジメントに必要な修正を加え、部下へのフィードバックや提案というカタチで部下の仕事に介入していくことを目指すことができる。
- コーチングでは、「教えない」「アドバイスしない」「否定しない」のが鉄則ですが、手順2を設定することで、上司は育成とマネジメントをメリハリをつけて両立させることが可能となります。
この方法を職場で試行錯誤し、自分のコーチング型マネジメントスタイルを創造していきたいと考えました。
おわりに
上司と部下のコミュニケーションについて、世界15カ国での調査結果の情報提供がありました。
上司と部下との会話の頻度については週に数回の機会があり<調査国中4位と好成績でした。
会話での上司部下の関係性を調査すると、会話の中で部下の話す時間割合は15カ国中14位となっており、上司が一方的に話をしている(説教している?)ことがあり、さらには部下から見て上司との関係は良好度については、15カ国中群を抜いて最下位の結果になっているそうです。
(2015年コーチング研究所調査)
日本の職場では、上司の人に聞くと「部下とちょこちょこ話しているよ、うちは大丈夫」と答えている場面がよく見られます。
しかし、会話の実態は、上司が指導(指示、説教)をしたり、説得(強制)していたり、体験談(自慢話)をしていたり、主役である上司が一方的に話をしているような状態になっているのではないでしょうか?私も反省するばかりです。
上司部下の信頼関係は会話の頻度、量との関係が深いそうです。
ワークショップで気づき、学んだことの納得感を自分の行動変容に繋げていこうと強く感じました。
ワークショップでは、3人グループをつくり、実際にコーチ、クライアント、オブザーバーの役割で2回ずつのべ6回のコーチング演習があり、実践的な経験ができ、非常に有意義な一日を過ごすことができました。
ありがとうございました。