最初は理想に燃え、やがて現実を知り、そして本当の人生を知る

2019年2月14日No.108 ワンセンテンスブログ

人は、生まれ出でて、見るもの新しく美しいと感じ、人生をスタートする。
素晴らしい体験の延長に理想を見つけ、理想に向かって紆余曲折進む過程の中でやがてどこかで最高潮を迎える。

また、紆余曲折進む中で、現実を知り、挫折し、自分の無力を知る。どこかでどん底の経験をする。

「人生、山あり谷あり」どちらも辿ることは、自身の人生観を得るには欠かせないことです。

いったい人間は二つの魂の誕生を持っているといえよう。世界がこんなに美しく、世の中がこんなに面白いものかと驚嘆する時がある。これが第一の誕生である。そしていつか、それと全く反対に、人間がこんなに愚劣であったのか、また自分も、こんなにくだらないものだったのかと驚嘆し、驚きはてる時がくる。これが第二の、誕生なのである。しかし、この時、人々は、本当の人生を知ったと言うべきであろう。
(「美学入門」より、『中井正一評論集』長田弘編、岩波文庫)

中井正一(1900 – 1952)は、映像メディアを射程に入れた独自の美学理論を構築した思想家。国立国会図書館初代副館長として、民族の記憶庫としての図書館を提唱した人です。

中井正一についてはこれまで全く知りませんでしたが、「一日一文 英知の言葉」(岩波文庫)の2月14日の文として掲載されていました。

「一日一文 英智の言葉」木田元編 岩波文庫

世界がこんなに美しく面白いものだと感心すること、自分はここまでできたと誇らしく思うことも多くある。

反面、 世間の薄情さ、人間の汚さ醜さ、自分の力の無さを痛感することも多くある。

第一の誕生、第二の誕生、成長する過程になぞらえ、なるほどと思いました。

人生に節目を感じる場面がいくつかありました。

卒業・社会人になった時、結婚した時、子供が生まれた時、子供が巣立った時。

また組織の中では、異動になった時、管理職として初めて部下を持った時、役職を離れた時、仕事の内容も折にふれて大きく変わったこともありました。

大きく人生に対する基本的な考え方が二分する時があったように思います。

第一の人生は、自己が先頭に立ち、自分が業績を残し、時代に自分の爪痕を残したいと思って生きた人生。

第二の人生は、他者の控えに回り、他者の業績を助け、他者の役に立つことで時代に足跡を残せれば良いとする人生。

ある日から突然というわけではありません。
何か大きな出来事があったからということでもないのですが...。

自分自身でできることに限界を感じたからかもしれません。

しかし、まだまだ、多くの人の協力を得て大きなことができるという意欲も持ち合わせています。

自分の能力を最大限に発揮したいという欲求はあります。そのつもりです。

自分自身がまだまだ成長しなければならないとも強く思います。

ただ昨今は、その先に自分以外の他者への「お役立ち」というものがないと意味がないように思うのです。

自分の人生が終盤に差し掛かり、自分はやがて消えゆくのみ。

とすると、後を託す誰かという「他者の存在」を無視できなくなったということなのかもしれません。

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西口満

「気づきによる学び、自ら成長する」を支援し、ひとりひとりのウェルビーイングの実現と生産性の高い職場のチームづくりを行い、企業や社会の発展に貢献する

ビジネスリーダー育成コーチ、
人事戦略のコンサルティングをしています。

プロフェッショナルとして「人の成長」に関わり続けることをライフワークとし、少しでも誰かの成長のお役に立てれば幸いです。

ブログでは、そんな私が学んだこと、気づいたこと、感じたことを発信し、誰かの、何か、前進のヒントになればと思っています。

これからも情報を発信し続けます。

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